夜明けが世界を染めるころ

「……なら、私にもディランのことを教えてください」

ディランは一瞬、目を細めて笑った。

「それこそ退屈だと思うけど」

「それでもです。だって、フェアじゃないでしょ?」

彼は少し考え込み、やがて肩をすくめる。

「いいよ、話をしよう」

私はわくわくする気持ちを抑えながら、彼の言葉を待つ。

「じゃあ、まずはそれぞれの生い立ちから……かな」

ディランは軽やかに話し始める。
幼い頃の失敗談、ちょっとしたいたずら、けれども家族や仲間のこと。
言葉の端々に微笑みが混ざり、時折ふっと笑い声を漏らす。

「そうそう、あのときは屋根から落ちかけてね……」
「え、そんなことあったんですか!」
「今でも思い出すよ。レイのヒヤヒヤした顔を」

私は笑いながら、彼の少年時代の姿を想像する。
真面目で時に厳しいだけの人だと思っていたディランの、ちょっと抜けた可愛らしい一面に胸が和む。

「最初に君に会ったときのことも、話そうかな」

私は顔を上げ、興味津々でディランを見つめた。

「君……女の子なのに、あの時は泥だらけでね。馬の世話をして、剣術までやっていた」

ディランの声には、くすっとした笑いが混じっている。

「ええ……あれって、そんなに変に見えてました?」

「正直、最初は変な子だと思ったよ」

彼は肩をすくめて、素直に言った。

「でもね、ただの変な子じゃなかった。
強くて、真剣で、でもどこか無邪気で……おてんばなのに、芯がある」

一瞬言葉を切り、思い出すように続ける。

「それに、剣術も馬術もどんどん上達していく。
見ていて……正直、驚いたものだ」

その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

「だから……興味を持ったんだ。君のことを、もっと知りたいって」

ディランは、真っ直ぐ私の目を見た。

「どうして、こんなにも普通の女の子とは違うのか……
ずっと気になっていた」

私は照れ隠しのように小さく笑い、頷く。

「そうですか……そんなに目立ってました?」

「目立ってたというより……」

ディランは柔らかく微笑む。

「忘れられなかった、が正しいかな」

夜の静けさの中、その声は穏やかに響いた。

「初めて会った日から、君のことが――
ずっと頭から離れなかったんだ」

ディランが熱っぽい視線を向ける。