夜明けが世界を染めるころ

ナタリーさんの静かな声が響く。

その言葉を噛みしめながら、私は目を閉じる。
自分の足で立っているつもりだった。だけど違った…
母から、父から、そして周りの人たちから。
どれだけ自分が、愛され、守られていたのか――。


胸の奥で、何かが燃え上がる。


「何もしないなんて……そんなことはできない。」

拳をぎゅっと握る。
母が、私のために命をかけて守った力――
その意思を、無駄にはできない。

「私は立ち向かいます」

小さく、しかし力強く、言葉を吐き出す。


「母が守ろうとしたように――私も守る。
自分の未来も、大切な人たちの未来も。
全部……守ります」

胸が熱くなり、目が自然と前を向く。


ディランは静かに私の隣に座り、言った。

「まだ時間はある。」

その言葉に、思わず目を上げる。

「蝶の会が壊滅したことと、オパール公爵家の不祥事……
今のガイルは、動きたくても身動きがとれない状態だ。」

私の胸がわずかに緩む。
状況は絶望的ではない、と理解する。

「……なら、私たちにも余裕がある、ということですね。」

ディランは頷く。

「そうだ。今なら、ガイルに対抗する手段を考える時間がある。
どんな力を使うのか、どう動くのか。慎重に、だけど確実に準備できる。」

彼の視線は、深く静かに私を捉えていた。
その眼差しには、単なる分析だけでなく――信頼と期待も含まれている。

「母上の遺した力を封印したままにしておくのか、それとも……使うのか。
選択は君にある。」

私は拳を握る。
母の意思と、自分の役割を背負ったまま、目の前の現実を受け止める。

「わかりました。準備を始めましょう。
私たちが動けば、ガイルの野望は、まだ阻止できる。」

ディランは微かに笑みを浮かべる。

「その意気だ。
焦らず、だが確実に。
時間はある――今は、策を練る時だ。」


外はもう暗闇だ。未来の戦いに向けた決意が静かに、しかし確実に固まっていった。