夜明けが世界を染めるころ

「さて……」

ナタリーさんは、ゆっくりと視線を巡らせてから口を開いた。

「どこから話しましょうかね。」

その声には、覚悟が滲んでいた。

「ユウリ。」

名を呼ばれ、ユウリは小さく背筋を伸ばす。

「あなたは……どこまで知っているの?」

その問いは、探るようでいて、逃げ道を与えない。

一瞬の沈黙。
そしてユウリは、静かに息を吸った。

「……真夜中に、見ました。」

低い声だった。

「誰にも知られないはずの場所で。
記録にも、報告書にも残らない“真実”を。」

ナタリーさんの瞳が、わずかに細められる。

ユウリは続けた。

「高純度魔法石の保管庫。
封印は、外からではなく――内側から解かれていた。」

「魔法陣は完璧でした。
暴走の痕跡もない。
むしろ……歓迎するような反応だった。」

言葉を選びながら、それでも止めない。

「魔宝石は、触れた者すべてに反応したわけじゃない。」

「……一人だけです。」

部屋の空気が、凍りつく。

「アイリス様だけに、
異常なほど、深く。」

ユウリは拳を握りしめる。

「それは事故ではありません。
少なくとも――想定外ではなかった。」

「実験は、“成功”していた。」

沈黙。

ナタリーさんは、目を伏せたまま、静かに頷いた。

「……やはり、そこまで見てしまったのね。」

顔を上げ、その瞳に後悔と決意を宿す。

「では……隠してきた意味も、もうないわね。」

ナタリーさんは、ゆっくりと言った。

「ユウリ。
あなたが真夜中に見たのは――」

一拍置く。

「アイリス様が、自ら“器”になることを選んだ瞬間。」

その言葉が、静かに、しかし決定的に落ちた。

部屋にいる全員が理解する。