「そうだ……ユリアに聞きたいことがあったの。」
「何でしょう?」
そして、自室の引き出しから、慎重に小さな包みを取り出す。
「お待たせ……」
「いえ、大丈夫です。」
ユリアは柔らかく微笑むが、私のの手元の包みに目を細めた。
私はゆっくりと、包みからタネを取り出し、掌に載せる。
――ナタリーさんが、私に託した種。
「この種……何かわかる?」
ユリアは慎重にタネを眺める。
「んー……タネだけだと、なんとも……」
心臓が少し早鐘を打った。
「確か…オレンジの花が咲くって……」
「オレンジ……ですか……」
ユリアは自分のカバンから、擦り切れた図鑑を取り出す。
ページは使い込まれ、文字や写真がかすれかけている。
「たぶん…これです。」
差し出された図鑑を、私は息を止めるようにして見つめる。
「ラナンキュラス……?」
「はい。幾重にも重なった花びらが、中心の雄しべを隠すように咲く花です。」
ユリアの声は冷静だが、空気には緊張が漂う。
「そして……花言葉が、『秘密』です。」
私はタネを握りしめる。
その小さな粒には、ナタリーの思いと、誰にも知られてはいけない真実が宿っている気がした。
空気が張りつめる中、私は小さく息を吸い込む。
「ごめん、ユリア。
急ぎの用を思い出したの。また、あとでね。」
「はい。お気をつけて。」
「ありがとう。」
ユリアの柔らかな笑顔を視界に焼きつけたまま、私は駆け出した。
――今は、淑女の嗜みだとか、そんなものはどうでもいい。
どうして、気づかなかったの。
走りながら、記憶が一気に巻き戻される。
ナタリーさんとの、あの会話。
ナタリーさんに会いに行ったのは、
私、ユウリ、ディラン、レイさんそしてオーウェン団長の―5人だった。
それなのに、ナタリーさんは私のことも、ユウリのことも分からなかった。
その時点で、どこかおかしかったのに。
それでもナタリーさんは、私と話している最中に、こう言った。
「……後ろの2人は、誰?」
私は深く考えもしなかった。
すぐ後ろにいたのは、ディランとレイさん。
そう、思い込んでいたから。
――でも、違う。
そこには、ユウリもいた。
本当なら、
「3人は誰?」
あるいは
「他の人は誰?」
そう聞くはずだった。
なのに、ナタリーさんは「2人」と言った。
背筋が、冷たくなる。
ナタリーさんは、ボケてなんかいなかった。
分からなかったんじゃない。
――知っていて、知らないふりをした。
秘密を隠すために。
そして、その秘密を――私に託すために。
私は胸元で、あの小さな種を強く握りしめた。
ラナンキュラス。
花言葉は――秘密。
「何でしょう?」
そして、自室の引き出しから、慎重に小さな包みを取り出す。
「お待たせ……」
「いえ、大丈夫です。」
ユリアは柔らかく微笑むが、私のの手元の包みに目を細めた。
私はゆっくりと、包みからタネを取り出し、掌に載せる。
――ナタリーさんが、私に託した種。
「この種……何かわかる?」
ユリアは慎重にタネを眺める。
「んー……タネだけだと、なんとも……」
心臓が少し早鐘を打った。
「確か…オレンジの花が咲くって……」
「オレンジ……ですか……」
ユリアは自分のカバンから、擦り切れた図鑑を取り出す。
ページは使い込まれ、文字や写真がかすれかけている。
「たぶん…これです。」
差し出された図鑑を、私は息を止めるようにして見つめる。
「ラナンキュラス……?」
「はい。幾重にも重なった花びらが、中心の雄しべを隠すように咲く花です。」
ユリアの声は冷静だが、空気には緊張が漂う。
「そして……花言葉が、『秘密』です。」
私はタネを握りしめる。
その小さな粒には、ナタリーの思いと、誰にも知られてはいけない真実が宿っている気がした。
空気が張りつめる中、私は小さく息を吸い込む。
「ごめん、ユリア。
急ぎの用を思い出したの。また、あとでね。」
「はい。お気をつけて。」
「ありがとう。」
ユリアの柔らかな笑顔を視界に焼きつけたまま、私は駆け出した。
――今は、淑女の嗜みだとか、そんなものはどうでもいい。
どうして、気づかなかったの。
走りながら、記憶が一気に巻き戻される。
ナタリーさんとの、あの会話。
ナタリーさんに会いに行ったのは、
私、ユウリ、ディラン、レイさんそしてオーウェン団長の―5人だった。
それなのに、ナタリーさんは私のことも、ユウリのことも分からなかった。
その時点で、どこかおかしかったのに。
それでもナタリーさんは、私と話している最中に、こう言った。
「……後ろの2人は、誰?」
私は深く考えもしなかった。
すぐ後ろにいたのは、ディランとレイさん。
そう、思い込んでいたから。
――でも、違う。
そこには、ユウリもいた。
本当なら、
「3人は誰?」
あるいは
「他の人は誰?」
そう聞くはずだった。
なのに、ナタリーさんは「2人」と言った。
背筋が、冷たくなる。
ナタリーさんは、ボケてなんかいなかった。
分からなかったんじゃない。
――知っていて、知らないふりをした。
秘密を隠すために。
そして、その秘密を――私に託すために。
私は胸元で、あの小さな種を強く握りしめた。
ラナンキュラス。
花言葉は――秘密。
