夜明けが世界を染めるころ


「オパール公爵家も後々どうにかしないとか…まあ、その前にリチャードを痛い目に合わせれば、しばらくオパール公爵家も痛手だろう」

「そうですね」

「ついたようだ、さっさと始末しよう」

変装がてらフードを目深にかぶる。
王族騎士団も外で待機させておく。
中は薄暗いが下品な笑い声に酒の匂いが漂っている。

「あちらにいますね」

「本当だ」

一際盛り上がっている席にこっそり近づく。彼女の名前が聞こえ耳を傾ける。

「なあ。リチャード。お前ラピスラズリ伯爵家の長女に結婚申し込んでるんだろ?どうなんだよ」


「あー、次期当主をティアナ嬢にと聞いたからね。上手くいけばラピスラズリ伯爵家を手中にできると思ってさ。
だけど中々誘いに乗ってこなくてさー。頭の良い女はめんどくさくて嫌だよな」

「いやでもすげぇー美人だろ。スタイルもいいしさぁ。たまんねぇーよな」

「確かに。ああいう気の強そうな女がひれ伏すのは気分がいいよなぁ。この魔女の秘薬を使えばちょろいだろ」

「おいおい、それ相当 値が張るもんだろ。どうしたんだよ」

「まあ上手くやったのさ。美味しい思いはしないとなあ」

……やはり、魔女の雫。

「レイ」

小さく囁く。

「ええ。証拠は十分です」

これ以上、聞く必要はない。
聞き続ければ――私の理性が保たなくなる。

「行くぞ」

フードを外し、一歩、光の中へ出る。

「リチャード・ファイアオパール」

その名を呼んだ瞬間、周囲の空気が凍りついた。

「誰だ、お前……」

リチャードが振り返り、私の顔を見た瞬間、血の気が引いていくのがわかる。

「お、おい……まさか……」

「残念だが、“まさか”だ」

私は静かに告げる。

「王命違反。
違法薬物の使用および流通。
貴族令嬢への脅迫と強要」

一つ一つ、罪を並べる。

「そして何より――
私の婚約者に、汚い手を伸ばした」

笑みを浮かべたまま、目だけは冷やす。

「覚悟はいいかい?
君は今夜、“貴族”として終わる」

外で待機していた騎士たちが、一斉に踏み込む。