夜明けが世界を染めるころ

朝になり、ベッドの中で今日の予定を思い返す。

——あ。

1ヶ月に一度の朝食会だ。
ラピスラズリ家当主であり、実の父でもあるアドルフと。

……嫌なんだよなあ。

仕事はできる。判断は正確。
けれど冷徹で、無慈悲で、感情というものをどこかに置き忘れてきた人だ。
朝から気が重い。

そんなことを考えていると、はっきりとしたノックの音が響いた。

「はーい」

たぶん、アリスだ。

「失礼いたします、お嬢様。おはようございます」

「おはよう」

「今日は……」

言いかけて、アリスが私の表情を見て言葉を切る。

「お父様との朝食会ね」

私が先に付け加えると、アリスは小さく苦笑した。

「……準備させていただきます」

アリスが選んだのは、水色のドレスだった。
身支度を整え、髪は低い位置で一つにまとめ、ドレスと同じ色合いと装飾のカチューシャをつける。

鏡の中の私は、少しだけ“いつもの憂鬱”から遠ざかって見えた。

「爽やかミントブルーコーデです」

アリスが、じゃじゃーん、と効果音までつけて言う。

「ありがとう。ドレスだけでも爽やかだと助かるよ」

そう言って立ち上がると、アリスは満足そうにうなずいた。

そのとき、扉の外から声がする。

「お嬢様、お支度はお済みでしょうか?」

ユウリだ。

「済んだよ、今行く」

扉を開け、廊下に出る。
そこには、いつも通りきちんとした姿のユウリが立っていた。

——さて。

逃げられない朝食会の始まりだ。