夜明けが世界を染めるころ

昨夜は蝶の会で遅くなり、今朝はのんびりと起床。
もう昼前だろうか。

ぼんやりと天井を見つめながら、昨日の夜の出来事が脳裏をよぎる。
煙、爆音、宝石、殿下の横顔――
思い出そうとすると、頭が少し重くなった。

コンコン、と控えめなノック音。

「お嬢様、お目覚めですか?」

「んー……おはよー、アリス」

扉が開き、アリスがいつもの穏やかな笑顔で入ってくる。

「だいぶお疲れですね。少し肩でも揉みましょうか」

そう言うが早いか、背後に回り込まれる。

「うー……気持ちいいぃ……い、いたいたいたいっ!」

「お嬢様、だいぶ凝ってますね」
容赦なく力を入れてくるアリス。

「もう、もう十分ですぅ……!」
ゴリュッ、って今すごい音しなかった!?
肩? 今、肩なの??

ちょうどその時。

コンコン。

「お嬢様、失礼いたします」

「ど、どうぞおおお……!」

変な声が出た。

「おはようございます……今、カエルが潰れたみたいな声がしましたが、大丈夫ですか?」

「カエルって……主人に向かってひどくない?」

「事実ですので」

しれっと言い切るユウリ。

特に気にした様子もなく、部屋に入ってくる。
昨夜あれだけ遅くまで動いていたはずなのに、疲れた気配は微塵もない。
髪も服もきちんと整っていて、相変わらず清潔感の塊みたいな人だ。

「体調はいかがですか?」

「……その顔、ずるいと思う」

「?」

「なんでもない」

アリスが一歩下がり、にこりと微笑む。

「お食事の用意をいたしますね。少し休まれたらお呼びください」

そう言って、静かに部屋を出ていった。