夜明けが世界を染めるころ

帰りの列車は、夕暮れの色を乗せて静かに走っていた。

規則正しい車輪の音が、
一日の疲れを揺らすように、ゆっくりと響いている。

向かいの席ではレオが窓に肘をつき、
外の景色を眺めながら欠伸をしていた。

「いやー、昨日今日は楽しかったな!」

「少し騒がしかったですけど、いい思い出になりましたね」

ユウリがそう言って微笑む。

トワは私の隣の席に座り、
膝の上に手を揃えて、流れていく景色を見ていた。

その横顔が、やけに静かだった。

「……あの」

列車の揺れに紛れるように、トワが口を開く。

「実はぼく、来月から学校に通うことになったんです」

「え、急じゃない?」

ルイが思わず身を乗り出す。

「来月って、もうすぐだぞ?」

レオも振り返った。

「はい」

小さく頷いてから、トワは続ける。

「だから……今日、皆さんと出かけられて楽しかったです」

「なんだよそれ」

レオが笑う。

「別れの挨拶みたいじゃん」

「そんなつもりじゃありませんよ」

トワは困ったように笑った。

窓の外で、夕日が鉄橋を赤く染めていく。

「でも……」

一瞬だけ、言葉が途切れた。

「こうして一緒にいられる時間って、
いつまでも続くわけじゃないんですよね」

「……急に大人みたいなこと言うなぁ」

レオが頭をかく。

私は、そっと尋ねた。

「どうして、今なの?」

トワはすぐには答えず、
窓に映る自分の顔を見つめてから、静かに言った。

「前から、考えてはいたんです」

それ以上は語らなかった。

列車がトンネルに入る。
一瞬、窓の外が闇に沈む。

トワの横顔も、影に溶けた。

やがて光が戻ると、
彼はいつも通りの柔らかな笑顔を浮かべていた。

「次は、どんな場所なんでしょうね」

その言葉が、
未来への期待なのか、覚悟なのか。

私には、まだ分からなかった。

列車は止まらず、
ただ前へ前へと走り続けていた。