まさかの人物が、雨に打たれ、ずぶ濡れのまま立っていた。
――デホラ男爵。
なぜ、ここに?
というか……殿下の警備体制、どうなっているのよ。
さすがに手薄すぎるでしょう。
そう思って殿下を見る。
……落ち着きすぎている。
まさか――
招き入れた?
「殿下ぁ……!
どうか、どうか話を聞いてください!」
大声を張り上げながら突進してくる男を、後ろから慌てて押さえ込むオーウェン団長。
「落ち着いてください、デホラ元男爵!」
「おや、こんばんは」
殿下は席を立ちもせず、ワイングラスを傾けたまま薄く笑った。
「寝込んでいると聞いていましたが……まさか仮病だったとはね」
その声音は穏やかで、だからこそ冷たい。
「む、娘のニーナは、まだ未熟なのです!
殿下を殺そうとしたわけではありません!」
必死に頭を下げる男爵。
「どうか慈悲を……!
私の財産と、男爵の地位をお戻しください!」
……ずいぶんと、自分勝手な言い分だ。
命があるだけでも、奇跡のようなものなのに。
「よくも、まあ」
殿下は静かにグラスを置いた。
「そのようなことが言えるものだね」
その瞬間、空気が一段冷える。
「確かに」
殿下は続ける。
「君の娘、ニーナは――
私を殺すつもりではなかったようだ」
「そうですとも!」
デホラ男爵は、縋るように顔を上げる。
「でも、君は違うだろ?」
殿下のエメラルドの瞳が鋭く光る。一瞬ルビーように赤くなったような気もしたが。
「な、なにを」
まさか、そういうことか。
近くにいるレオに目配せをする。
「君はあれが媚薬ではなく、毒薬だと知っていたね。私を殺そうとしていたのはデホラ。お前だ」
「…ち、ちがう!」
「誰の差し金かは、まあわかってる。お前は私を殺したあと、協力者であるウェイターを犯人にしたてあげるつもりだったかもしれないが。
そのウェイターは口封じのため、自害に見せかけて殺したのだろう。もうすでに裏はとってある。君は間違いなく死刑に値するね」
殿下に飲み物をこぼしたウェイターのことか。
というかメインのお肉冷めるから食べてもいいよね。
ナイフで切りながら一口頬張る。おいしい。
――デホラ男爵。
なぜ、ここに?
というか……殿下の警備体制、どうなっているのよ。
さすがに手薄すぎるでしょう。
そう思って殿下を見る。
……落ち着きすぎている。
まさか――
招き入れた?
「殿下ぁ……!
どうか、どうか話を聞いてください!」
大声を張り上げながら突進してくる男を、後ろから慌てて押さえ込むオーウェン団長。
「落ち着いてください、デホラ元男爵!」
「おや、こんばんは」
殿下は席を立ちもせず、ワイングラスを傾けたまま薄く笑った。
「寝込んでいると聞いていましたが……まさか仮病だったとはね」
その声音は穏やかで、だからこそ冷たい。
「む、娘のニーナは、まだ未熟なのです!
殿下を殺そうとしたわけではありません!」
必死に頭を下げる男爵。
「どうか慈悲を……!
私の財産と、男爵の地位をお戻しください!」
……ずいぶんと、自分勝手な言い分だ。
命があるだけでも、奇跡のようなものなのに。
「よくも、まあ」
殿下は静かにグラスを置いた。
「そのようなことが言えるものだね」
その瞬間、空気が一段冷える。
「確かに」
殿下は続ける。
「君の娘、ニーナは――
私を殺すつもりではなかったようだ」
「そうですとも!」
デホラ男爵は、縋るように顔を上げる。
「でも、君は違うだろ?」
殿下のエメラルドの瞳が鋭く光る。一瞬ルビーように赤くなったような気もしたが。
「な、なにを」
まさか、そういうことか。
近くにいるレオに目配せをする。
「君はあれが媚薬ではなく、毒薬だと知っていたね。私を殺そうとしていたのはデホラ。お前だ」
「…ち、ちがう!」
「誰の差し金かは、まあわかってる。お前は私を殺したあと、協力者であるウェイターを犯人にしたてあげるつもりだったかもしれないが。
そのウェイターは口封じのため、自害に見せかけて殺したのだろう。もうすでに裏はとってある。君は間違いなく死刑に値するね」
殿下に飲み物をこぼしたウェイターのことか。
というかメインのお肉冷めるから食べてもいいよね。
ナイフで切りながら一口頬張る。おいしい。
