夜明けが世界を染めるころ

「せっかくだ! レオ、君のフルコースをぜひいただきたいのだけれど、作ってもらえるかな?」

「もちろんです! 泊めていただくお礼に、張り切って作りますよ!」

やる気満々のレオ。

「では、早速ですがレオさんを調理場へ案内します」

レイさんがすっと立ち上がり、レオを手際よく連れて行く。

「殿下」

「なんだい?」

「私が言うのも何ですが……毒殺未遂されかけたのに、今日会ったばかりのレオに料理を任せるのはなぜですか? 今日のピクニックでの出来事もそうです」

殿下は何の疑いもなく口にしていた。
もちろん、レオが料理に毒を盛ることなど絶対にありえない。
それは私がレオの人柄を知っているからだ。でも、目の前の殿下は今日初めて会ったはずなのに、なぜそこまで疑わずにいられるのか――不思議でならない。

「心配してくれているのかな? 嬉しいな」

ふふっと笑う殿下に、少しイライラする。

「はぐらかさないでください。真面目に聞いています」

「そうだね……君を信用しているからだよ」

真剣な顔で、真っ直ぐ私を見つめる。オリーブ色の瞳が、雨に濡れた窓越しの光に輝いて美しい。

「それはどういうことですか……?」

「私はね、ティアナ嬢のことを高く評価しているんだ。そんな君が、料理に毒を盛るような輩を側に置くはずがない」

「それはそうですが……」

「さて、少し疲れただろう。客室でゆっくりしてから食事にしよう」

殿下の使用人が部屋に案内してくれる。

ふー……疲れた。

「お嬢様、お疲れ様でした。まさかこんな雨になるとは、山の天気はわかりませんね」

「本当よね。運が良いのか悪いのか……」

「それにしても、殿下の暗殺未遂事件にもローブの男が関わっているとは…中々厄介ですね」

「そうね。思っていたより闇が深そうだわ」

「アイリス様のこともわかりませんでしたね」

「そうね。でも、会いに行けてよかったわ。また一つ一つ調べていきましょう」

「ええ、お供いたします」

「頼もしいわね」

ふふっとユウリと笑い合う。

その時――扉のノック音が響いた。続いて数人の足音も聞こえる。