夜明けが世界を染めるころ

殿下と馬車に乗り込んで、湖畔のそばの屋敷に戻ってきた。

「お嬢さーん、おかえりなさい!」

「お姉様、おかえりなさい」

「おかえりなさい」

「ただいま。レオ、トワ、ルイ」

外は暗くなり、雷鳴と豪雨が屋敷の窓を叩きつける。これでは列車も運休するかもしれない。どうしたものか、と少し焦る。

「この雨と雷では、帰りの列車は動かないかもしれませんね」

ユウリが落ち着いた声で私に告げる。

「そうね……近くの宿を探すしかないかしら」

そう話していると、殿下が静かに近寄ってきた。

「ティアナ嬢、ここに一泊していけばいい」

「いえ、そんなご迷惑は……」

さすがに第一王子の別荘にお世話になるなど、とても言い出せない。

「どうしてだい? この雨と雷だ。近くの宿はきっと満室だろうし、部屋は余っている。レイも大丈夫だろ?」

「もちろんです」
レイさんは優しく微笑む。

「殿下……でも……」

言いかけたところで、外の雷鳴が轟く。窓ガラスに雨粒が打ちつけられる音が、急に心細さを強めた。

――トワが小さくあくびしている姿がみえる。ここで無理をする必要はないのかもしれない。

「……わかりました。お言葉に甘えて、一泊させていただきます」

殿下はにっこりと微笑み、安心したように頷いた。

「そうか、それでいい。ゆっくり休んで、明日また行動すればいい」

屋敷の灯りは外の豪雨とは対照的な、部屋は穏やかで暖かな光。