――ニーナ令嬢。
宝石の暴走。
その言葉が頭の中で反芻される。
思わず考え込んでいると、視界に影が差した。
覗き込んでくる、金色。
「……もしかして、興味あるかい?」
少し楽しそうに、殿下が言う。
「ええ」
否定する理由はなかった。
「なら、一緒に来るかい?
君は私の命の恩人だしね」
――いや、私がいなくても、殿下なら余裕だったでしょうに。
心の中でそう突っ込みつつ、表情には出さない。
「ただ……実は、こちらに来たのは休日を過ごす予定もあったのですが
私のお世話をしてくれていた方に、会いに来たくて」
そう。
日帰りの予定だったし、このあとレオとトワとは別行動になるつもりだった。
殿下は少し考える素振りを見せてから、ぱっと顔を上げた。
「なら、こうしよう」
悪戯を思いついた子供みたいな声。
「この近くに、私の別荘があってね。
ティアナ嬢のお連れ様は、そこで私の使用人たちがもてなそう」
一瞬、言葉を失う。
「そして――」
殿下は続ける。
「私たちは、そこから馬車に乗って、
君の行きたい場所と、私の行きたい場所、両方に行く」
さらりと、逃げ道を塞ぐような提案。
「いい案だと思わないかい?」
……非常に、良い提案だ。
理屈としては、非の打ち所がない。
護衛の面も問題ない。
仲間たちも安全に過ごせる。
そして、私自身も目的を果たせる。
――それでも。
胸の奥で、小さなためらいがざわめく。
いいのだろうか。
殿下の誘いに、こうして乗ってしまっても。
湖畔を渡る風が、帽子の縁を揺らした。
私はその感触を確かめるように、ぎゅっと指先を握る。
宝石の暴走。
その言葉が頭の中で反芻される。
思わず考え込んでいると、視界に影が差した。
覗き込んでくる、金色。
「……もしかして、興味あるかい?」
少し楽しそうに、殿下が言う。
「ええ」
否定する理由はなかった。
「なら、一緒に来るかい?
君は私の命の恩人だしね」
――いや、私がいなくても、殿下なら余裕だったでしょうに。
心の中でそう突っ込みつつ、表情には出さない。
「ただ……実は、こちらに来たのは休日を過ごす予定もあったのですが
私のお世話をしてくれていた方に、会いに来たくて」
そう。
日帰りの予定だったし、このあとレオとトワとは別行動になるつもりだった。
殿下は少し考える素振りを見せてから、ぱっと顔を上げた。
「なら、こうしよう」
悪戯を思いついた子供みたいな声。
「この近くに、私の別荘があってね。
ティアナ嬢のお連れ様は、そこで私の使用人たちがもてなそう」
一瞬、言葉を失う。
「そして――」
殿下は続ける。
「私たちは、そこから馬車に乗って、
君の行きたい場所と、私の行きたい場所、両方に行く」
さらりと、逃げ道を塞ぐような提案。
「いい案だと思わないかい?」
……非常に、良い提案だ。
理屈としては、非の打ち所がない。
護衛の面も問題ない。
仲間たちも安全に過ごせる。
そして、私自身も目的を果たせる。
――それでも。
胸の奥で、小さなためらいがざわめく。
いいのだろうか。
殿下の誘いに、こうして乗ってしまっても。
湖畔を渡る風が、帽子の縁を揺らした。
私はその感触を確かめるように、ぎゅっと指先を握る。
