夜明けが世界を染めるころ

作業台にある宝石を避けて、椅子に腰掛ける。


「いただきます」

紅茶を口にすると、ベルガモットの爽やかな香りがふわりと広がった。
胸の奥まで染み渡るような一杯に、ユウリのささやかな労りが感じられる。
今日は、穏やかな気持ちで始められそうだ。

「ミルクはお入れしますか?」

「うん、お願い」

そう答えると、ユウリは慣れた手つきでカップにミルクを注いだ。
白がゆっくりと紅茶に溶け、色がやわらいでいく。

「朝食を終えましたらお着替えのお支度をしていただき、9時に出発でよろしいでしょうか」

「そうだね、そのくらいで大丈夫。……あ、そうだ。セナに護衛を頼み忘れてた。お願い」

「かしこまりました。伝えておきます。7時ごろ、アリスを向かわせます」

「いつもありがとう、ユウリ」

「はい」

灰がかった薄栗色の髪が、窓から差す光を受けて柔らかく揺れる。
角度によって紫や青を含むその色合いは、まるで磨かれたフローライトのようだった。
長さは肩に届くほど。
きちんと整えられているが、どこか風にほどけやすそうな柔らかさがある。
切れ長の瞳は淡い藤色。

ユウリはふんわりと微笑んで答えた。
穏やかで優しく、それでいて仕事は的確。
幼い頃から支えてくれている存在で、家族よりも長い時間を共にしてきた。
だからこそ、私は彼を疑ったことがない――それほどの信頼がある。

やがてユウリが部屋を出ていく。
私は用意された朝食を手早く食べ、机に残された宝石に視線を戻した。

出発まで、もう少し。
残りの仕事を片付けてしまおう。