夜明けが世界を染めるころ

隣に並んで座るトワを見ながら、
私はふと、彼との出会いを思い出していた。

――随分、馴染んできたな。

そう感じられるほどには、彼はこの場所に溶け込んでいる。


2年前。

トワは、まだ8歳だった。

父・アドルフの遠縁にあたる親戚の息子。
両親を不慮の事故で亡くし、身寄りを失った子ども。

そう説明されたけれど――
彼は泣いていなかった。

怯えも、混乱もなく、
ただ静かに、周囲を観察するような視線だけを持っていた。

父は冷淡で、
母も兄のマルクも、彼に特別な関心を示さなかった。

まるで最初から“いないもの”として扱うように。

だから私は、声をかけた。

「私、ティアナ・ラピスラズリよ。よろしくね。
今日からお姉さんになるから、何でも頼って」

そう言った私を、トワはじっと見つめた。

感情の読めない瞳で。

「……いえ。お構いなく」

拒絶というより、
必要性を感じていないような声音だった。

それから何度話しかけても、
返ってくる言葉は短く、淡々としていた。

悲しんでいるようにも、
怒っているようにも見えない。

――まるで、人の感情というものを知らないみたいだった。

それでも。

それでも私は、放っておくことができなかった。

あの子がここに「いていい」のだと、
誰かが伝えなければならない気がしたから。