夜明けが世界を染めるころ

気づけば、夜中に寮を抜け出していた。
こんなことをするのは、初めてだった。

夜の街は、嫌というほど昔を思い出させる。
酒の匂い、笑い声、男と女が入り乱れる雑踏。
どこか淫らで、息苦しい空気。

「あら〜、そこの綺麗な旦那。寄っていかない?」

軽薄な声に呼び止められる。
薄い布に包まれた体、作り笑い。

――お嬢様じゃない、誰か。
そのぬくもりに触れれば、この苦しさや不安は消えるのだろうか。

気づけば、知らない部屋にいた。
目の前には、見知らぬ女。
何かを話しているが、耳に入らない。

濃い化粧、強すぎる香り。
お嬢様とは、何もかもが違う。

衝動のままに身を委ねた。
けれど――。

終わったあと、胸に残ったのは満足ではなく、
余計に深くなった虚しさだけだった。

「良かったわ。また来てね、旦那」

女が手を振る。
抱きしめられても、抱きしめ返しても、何も感じない。

そのあとのことは、よく覚えていない。
ただ、絡んできた男がいたから――返り討ちにした、それだけだ。