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ガタガタ ドッターン
自室の扉が、音を立てて吹き飛んだ。
……なにごとだ。
「おいおいおいおい」
荒い声。
「そこのガキ。
なんで――俺が作った飯を食わねぇんだよ!!」
次の瞬間、
胸元を強く掴まれた。
息が詰まる。
「ちょっと、レオさん!!」
「子供相手に何してるんですか!」
「だ、だめですー!」
音を聞きつけた3人の騎士団員が、
慌てて止めに入る。
……けど。
ぐっと力を入れられ、
簡単に振り払われた。
(……強い)
この人、
冗談抜きで力がある。
喉が鳴る。
「……食べられない」
俺が言葉を絞り出すと、
レオの眉が大きく動いた。
「ああん!?」
低く、怒鳴る。
「俺が作った飯が、
“食べられない”だと?」
掴まれていた胸ぐらが、
さらに強く引かれる。
次の瞬間――
身体が、宙に浮いた。
視界が反転する。
(……っ)
反射的に、
教え込まれた通りに身体を丸める。
床を転がり、
扉のあった方向へ転倒した。
痛みはある。
でも、致命的じゃない。
……剣の訓練の成果だ。
静まり返る室内。
誰かが、息を呑む音がした。
レオは、
数歩こちらに歩み寄り、
低い声で言った。
「なぁ、ガキ」
怒りだけじゃない、
何かを堪えるような声。
「お前さ……
俺が、何のために飯作ってると思ってんだ?」
俺は、答えられなかった。
答えなんて、
知らなかったから。
ただ一つ、
頭の中にあるのは――
(……俺は、まだ足りない)
その思いだけだった。
