夜明けが世界を染めるころ



「それでは、その方向で進めましょう。ただし、宝石のカット面や輝きに妥協せず。形は単純に、でも品質は最高級を維持する――これが絶対条件です」

加工班の一人が腕組みをして、少し渋い顔をする。

「…いや、女の子にここまで細かく指示されるとは思わなかったな。正直やれるかどうか不安だ」

「おい、ティアナお嬢様に失礼だろ」

代表のジョナが加工班の一人を叱責するが、私はそれを手で阻止する。
私は軽く微笑みながら、冷静に言う。

「市民向けの価格でも美しいジュエリーを完成させるには皆さんの力が必要です。私は皆さんの仕事を信頼しているんです」

男性たちはしばらく黙って私を見つめるが、やがて渋々頷く。
「…わかった。やってみるか」

私は宝石を手に取り、ひとつひとつの形や角度を確認しながら、加工班に具体的な指示を出していく。
まだ完全に信頼されたわけではないが、少なくとも「女だから甘く見ていた」という壁を少しずつ超え始めたことが、手の動きや表情から伝わってくる。

一通り話がまとまった。

「ティアナお嬢様、今日は本当にありがとうございました。お嬢様に対して失礼な態度をとるものもいまして、誠に申し訳ありませんでした」

深々と頭を下げるラルクル商会の代表のジョナ。

「いえ、気にしないでください、実際女だからと甘く見られるのは慣れておりますので」

ジョナは、仕事を学び始めた頃からお世話になっていて、私の宝石鑑定士としての実力も認めてくれている人だ。

「いえ、アドルフ様もティアナお嬢様がこんなにご立派に成長されさぞ嬉しいことでしょう」

その言葉に苦笑いを浮かべつつ、曖昧に頷く。
父は私をそんな風に思っていない、ただ’使える’か’使えない‘かで判断してる。父はそういう冷淡で合理的な人だ。