「……だけど俺は、ここから出たってどう生きていけばいいかわからない」
鉄の冷たさが、服越しに伝わってくる。
鎖の音。血の匂い。
ここまで来た以上、助かるとは思っていなかった。
本当は――
生きたいのかもしれない。
そんなこと、考える資格もないはずなのに。
「それは大丈夫!」
唐突に、場違いなほど明るい声が響いた。
「私があなたに衣食住を提供するわ!
ただし、タダでとは言わない」
……は?
「あなた、私の騎士になりなさい」
「は?」
間抜けな声が、勝手に口から出た。
「はぁあああ!?」
今度は、俺じゃない。
俺を押さえつけている、銀髪の男――騎士だろう――の声だ。
うるさい。
こっちは状況が飲み込めてないんだ。
「お嬢様、さすがにダメですよ」
銀髪の男が、露骨に頭を抱える。
「なんでよ。
野盗グループを捕まえるのに、だいぶ貢献したじゃない」
彼女は胸を張って言った。
「お父様にうまく言えば、これくらいどうにかできるでしょ」
「いや、まあ……そうですけど……」
銀髪の男の声が弱くなる。
ああ、なるほど。
この人、完全にこの主人に振り回されてるな。
「ですかお嬢様、彼は人殺しです。
それを騎士にするのは、さすがに難しい」
……正論だ。
俺は、人を殺してきた。
選択肢なんてなかった、なんて言い訳でしかない。
今さら、まともに生きられるわけがない。
「ええ、そうね」
彼女は、あっさりとうなずいた。
一瞬、胸の奥が冷える。
「でも、彼が殺していたのって――悪党よ」
……は?
「ざっと調べたけど、
指名手配犯で、しかも死刑確定してる者ばかりだった」
淡々と、事実を並べる。
「確かに、彼は人殺し。
それは変わらない」
視線が、まっすぐ俺に向く。
逃げ場のない、澄んだ目。
「でもね」
声が、少しだけ柔らかくなった。
「生きるために、その術しか知らなかった。
それって、罪だけで切り捨てられる話かしら」
……やめろ。
そんなふうに、見ないでくれ。
「彼は子供よ。まだ」
その一言で、胸の奥が軋んだ。
「まだ、やり直せるはず」
俺は、思わず目を伏せた。
「私が、新しい生き方を教えてあげる」
その言葉は、
命令でも、同情でもなかった。
まるで――
当然のことを言うみたいに。
沈黙が落ちる。
銀髪の男が、深いため息をついた。
「……本気、なんですね」
「ええ」
即答。
「お嬢様」
男は、俺を一度見てから、彼女を見る。
「後悔しますよ」
「しないわ」
迷いは、どこにもなかった。
その瞬間、俺は理解した。
この人は――
俺を“救おう”としてるんじゃない。
「生きろ」と、
選択肢を、突きつけてきている。
怖かった。
同時に――
生きたい、と思ってしまった。
鉄の冷たさが、服越しに伝わってくる。
鎖の音。血の匂い。
ここまで来た以上、助かるとは思っていなかった。
本当は――
生きたいのかもしれない。
そんなこと、考える資格もないはずなのに。
「それは大丈夫!」
唐突に、場違いなほど明るい声が響いた。
「私があなたに衣食住を提供するわ!
ただし、タダでとは言わない」
……は?
「あなた、私の騎士になりなさい」
「は?」
間抜けな声が、勝手に口から出た。
「はぁあああ!?」
今度は、俺じゃない。
俺を押さえつけている、銀髪の男――騎士だろう――の声だ。
うるさい。
こっちは状況が飲み込めてないんだ。
「お嬢様、さすがにダメですよ」
銀髪の男が、露骨に頭を抱える。
「なんでよ。
野盗グループを捕まえるのに、だいぶ貢献したじゃない」
彼女は胸を張って言った。
「お父様にうまく言えば、これくらいどうにかできるでしょ」
「いや、まあ……そうですけど……」
銀髪の男の声が弱くなる。
ああ、なるほど。
この人、完全にこの主人に振り回されてるな。
「ですかお嬢様、彼は人殺しです。
それを騎士にするのは、さすがに難しい」
……正論だ。
俺は、人を殺してきた。
選択肢なんてなかった、なんて言い訳でしかない。
今さら、まともに生きられるわけがない。
「ええ、そうね」
彼女は、あっさりとうなずいた。
一瞬、胸の奥が冷える。
「でも、彼が殺していたのって――悪党よ」
……は?
「ざっと調べたけど、
指名手配犯で、しかも死刑確定してる者ばかりだった」
淡々と、事実を並べる。
「確かに、彼は人殺し。
それは変わらない」
視線が、まっすぐ俺に向く。
逃げ場のない、澄んだ目。
「でもね」
声が、少しだけ柔らかくなった。
「生きるために、その術しか知らなかった。
それって、罪だけで切り捨てられる話かしら」
……やめろ。
そんなふうに、見ないでくれ。
「彼は子供よ。まだ」
その一言で、胸の奥が軋んだ。
「まだ、やり直せるはず」
俺は、思わず目を伏せた。
「私が、新しい生き方を教えてあげる」
その言葉は、
命令でも、同情でもなかった。
まるで――
当然のことを言うみたいに。
沈黙が落ちる。
銀髪の男が、深いため息をついた。
「……本気、なんですね」
「ええ」
即答。
「お嬢様」
男は、俺を一度見てから、彼女を見る。
「後悔しますよ」
「しないわ」
迷いは、どこにもなかった。
その瞬間、俺は理解した。
この人は――
俺を“救おう”としてるんじゃない。
「生きろ」と、
選択肢を、突きつけてきている。
怖かった。
同時に――
生きたい、と思ってしまった。
