夜明けが世界を染めるころ

騎士団員として過ごす日々も、早くも数ヶ月が経った。仕事に訓練にと忙しい毎日だが、ティアナお嬢様が手合わせしてくれるおかげで、自分の剣術も格段に上達しているのがわかる。



「おい、アレン。夕飯いくぞ」

「はい!」
訓練を終え、ロベルト先輩に誘われていつもの食事処へ向かう。

席につくと、ふと疑問が頭をよぎる。
「そういえば…最近セナ副団長、なんだかピリピリしている気がするんですけど…気のせいですか?」

ロベルト先輩は苦笑しながらうなずく。
「あー、気のせいじゃないな。たぶん、お嬢様の結婚話が出てるからだろう」

「え!?結婚…ですか?」
思わず声が大きくなる。最近、お嬢様が訓練に来ないことには理由があったのか。

「第2騎士団の団長オリバーとお見合いしたって話だぜ」

「えっ!け、結婚しないですよね?」
アレンの頭は混乱する。第2騎士団の団長と…? そんな話、聞いていない。


「そこは安心しろ。お嬢様が本気で結婚するつもりはない。あくまで形式的なもの、政治的な体裁だと思え」
ロベルト先輩の表情は穏やかだが、どこか心配そうでもある。

「そ、そうなんですね…でもお嬢様にその気がなくても…オリバー団長がお嬢様に求婚しませんよね?」

「いやオリバー団長は自分の筋肉が好きなだけで、多分女性には興味ないだろう」

「へぇ、そうなんですね」
変わっている人もいるんだなぁ。胸の奥で、ほっと安堵の息をつく。ティアナお嬢様が誰かと本気で結婚するなんて、まだ想像できない。


「でもな、セナ副団長がピリついているのは事実だ。お嬢様を守りたい気持ちが強すぎて、普段より厳しく見えているんだろう」

「ああ、だから訓練中も少し神経質だったんですね」
アレンは思い返す。手合わせの時、セナ副団長がいつもよりぎこちなく感じたのも、気のせいではなかった。

「お前も訓練の時は気を抜くなよ。お嬢様を守るつもりなら、まず自分が強くならないと」
ロベルト先輩の目が真剣になり、アレンの胸に熱い決意が湧き上がる。

「は、はい!もっと強くなります!」
拳を握りしめ、心の中で覚悟を固める。

「よし、それでこそ第3騎士団の一員だ」
ロベルト先輩はにっこり笑い、アレンの肩を軽く叩いた。

「ちなみに、お嬢様のお見合い話は形式だけとはいえ、騎士団内の雰囲気も少し変わるかもしれない。気をつけろよ」

「はい!」
アレンは力強く返事をした。