夜明けが世界を染めるころ

「こちらをご覧ください」

資料を受け取り、目を通す。
宝石の仕入れ価格、人件費、材料費に加工費――単価まで細かく書かれている。

「うん、妥当だと思う。これで進めてもらって構わないわ」

「ありがとうございます」

「あと一つ。試作品はすべて女性向けのものばかりね。
もし可能なら、男性用のジュエリーも少し考えてみて」

「確かにそうですね。わかりました!」

話は上手くまとまり、ラルクル商会の方々は何度もお礼を言いながら帰って行った。

書斎に戻り、また残りの仕事を処理し始める。

「お嬢様、少しよろしいでしょうか?」

「何?書類に不備がある?」
目の前の書類に目を通しながら、ユウリの問いに答える。
――この計算、おかしいな。ちょっと前のやつも確認しよう。
立ち上がり、本棚から取り出す。

「いえ、非の打ち所がないほど完璧な仕上がりです」

「そう」

冊子になっているものをパラパラめくる。
あった、あった…えっと。

「お嬢様、いい加減にしてください」

「へっ?」
気づけば至近距離にユウリが立っていて、本棚との間に私。
ユウリの右腕がそばに――まさかの壁ドン。
何事!?
しかも、なぜ怒っているのよ。
目の前のユウリは真剣そのもので、怒っている様子。

「何で怒ってるのよ?」
逃げようとした瞬間、左腕も伸びてきた――。

「本当にわかりませんか?」

ユウリの瞳が力強く私を見つめる。

「いや、わからないから聞いているんだけど…」

するとユウリの左手が、私の頬にスーッと触れたかと思うと――

「いひゃひゃひゃ!いひゃっ!」

左手でムギュッと頬を鷲掴みにされる。
あ、ちょっと!ご主人に何やってるのよ!
持っていた書類がバラバラに飛び散ってしまった。

「お嬢様。何ですか、この肌荒れと目の充血。全然休んでいないでしょう。
涼しげな顔で仕事して、完璧なのがまた何とも言えませんけど。
仕事に支障が出たらすぐ休めと言えるのに、なぜ休めていない時に謎の集中力を発揮して自分を追い詰めるんですか。聞いてますか?」

「きひてます…はなひて…」

左手からようやく解放される。
ふぅ…ほっぺた、赤くなっちゃう。