夜明けが世界を染めるころ

戻るつもりなんて、微塵もない――。

「私は先に行きます」

真っ直ぐに見つめると、サーフェスは少し残念そうに微笑む。

「君は…そういう人だったね」

ぽつりと呟いた声に、ほんの一瞬、困惑が見えた。
だがすぐに表情を引き締め、真剣な様子に戻る。

「では、少し核心に触れようか。
ルナ、君が知りたいのは――宝石事件いや魔女の雫事件の裏側だろう?」

「はい……魔女の雫と蝶の会、それに関わる人々のことも」

サーフェスはゆっくりと頷き、低く重い声で語り始める。

「魔女の雫はね、単なる宝石ではない。
宝石を媒介にして、人の弱さや憎悪、恐れ、絶望――
そういった感情に漬け込むのだ」

胸の奥がざわつく。

「それを……どうするのですか?」

「より強大な形となり、魔女の紅血に変わる。
紅血はただの魔力ではない。
持つ者の欲望を増幅させ、途方もない力を与える」

思わず声が震える。

「そんな恐ろしいものを……」

サーフェスの目が、暗く光った。

「それをある人物が利用しようとしている」

「ある人物とは?」

「それは……まだ語るべきではないね」

その言葉が、部屋の空気を一層重くする。
目の前の真実が、すべてを覆い隠す影となる――。