夜明けが世界を染めるころ

ティアナside

街に入ると、すぐに商業区の空気に変わる。
呼び込みの声、宝石箱が擦れる音、値段交渉の熱気。

今回の目的は、ラピスラズリ家が出資している宝石店の視察と助言。
目的のお店に足を踏み入れる。

「いらっしゃいませ。おやとても美しいご令嬢ですね。貴女に合う素敵な宝石がありますよ」

この様子だと私のことを知らないな。
店主が最近変わったと父から聞き、視察を頼まれているのだが。

「それは楽しみです、早速宝石を見せていただきたいのだけれど」

「こちらが、今話題の新入荷です」

店主が差し出したのは、深い青色の宝石。値段も割高だ。
一見すると質の良いサファイアだが――

「少し、よろしいですか」

許可をもらい、布の上で光にかざす。
角度を変える。

……やはり。

「これは天然ではありませんね。合成石です」

店主が一瞬、言葉に詰まる。

「な、なぜそれを……?」

「色の均一さが不自然です。それに内部の気泡の入り方が、天然の成長線と違う」

さらに表面を観察する。

「研磨も少し甘い。正面からは綺麗ですが、縁で光が乱れています。
この値段で買うことは到底できませんね。」

宝石を元の位置に戻す。
店主が口元を震わせながら声を発する。

「あ、あなたは一体…」

「失礼、自己紹介がまだでしたね。ティアナ ラピスラズリです」

「た、大変失礼致しました」

勢いよく頭を下げる。

「気にしないでください。それよりもこの宝石ですが…」

「どうかご慈悲を」

震えながら懇願する。
私がそんな恐ろしく見えるのだろうか。なんかいじめている気分だ。