夜明けが世界を染めるころ

「そう」

私が頷くとアレンが木剣と魔宝石を見比べて首を傾げた。

「これは……何をするものなんですか?」

「セナ副団長の魔宝剣の力を制限するんだよ。
簡単に言うと魔力阻害だね」

テオが代わりに説明する。

私は静かに頷いた。
「これは特殊な魔宝石なの。魔法陣と発動条件がとても厄介だけど、その分、魔力の動きを悟られにくい」

皆の視線が私に集まる。

「まず、この木剣に私の魔宝剣を仕込む。
その中に魔法陣を組み込んで、この魔宝石を媒介にする」

私は指で順を追うように説明する。

「次に、その魔宝剣をセナに触れさせる。
そして――セナが私にその魔宝剣を差し出した瞬間」

一瞬、言葉を切った。

「魔宝剣を通して、私はセナの魔力とつながる。
その接続が成立したとき、魔宝石が発動するの」

アレンが息をのむ。

「私が魔宝剣で攻撃すれば、セナも同じように魔宝剣を使う。
その瞬間になって、ようやく気づくはず」

私は低く告げた。

「――自分の魔宝剣の力が、制限されていることに」

沈黙が落ちる。

「……すごいです」
アレンが素直に言ったあと、少し不安そうに続ける。

「でも、都合が良すぎませんか?」


「だからこそ、セナ自身に私の剣を選ばせるの」

その言葉の意味がすぐには理解できなかったのか、アレンはまだぽかんとした表情のままだった。
けれど、テオだけは違った。

「――お嬢さま、それ最高」

テオはにやりと笑う。

私は静かに続けた。

「セナはね、いつも訓練のとき、必ず私のために剣を選んでくれるの。
並んでいる剣の中から、いつも一番いいものを」

それが当たり前のように。

「セナは私のことを“守る存在”だと思ってる。
……主人と騎士の関係だから、当然よね」

一瞬、胸の奥がちくりと痛む。
それでも、私は目を伏せなかった。

「だから――私は、その優しさを利用する」

その言葉が落ちた瞬間、部屋の空気が静かに引き締まった。

誰も否定しなかった。
それが必要なことだと、全員が理解していたから。