夜明けが世界を染めるころ

――そろそろだろう。

そう思った矢先、セナは私の前に姿を現した。
いつもの穏やかな表情ではない。
剣を抜かずとも、張り詰めた空気が伝わってくる。

「お嬢様。これ以上、宝石事件や蝶の会の詮索はやめてください」

迷いのない声。
それが、余計に分かりやすかった。

「どうして?」

「危険だからです」

たった一言。
でも、その裏にあるものが手に取るように分かる。

――守るつもりなのだ。
私を、この件から遠ざけることで。

「……そう」

私は一度、息を整えた。

「なら、条件がある」

セナはわずかに眉を動かした。

「なんでしょう」

「私と勝負しましょう。剣で」

セナは即座に否定しなかった。
それが、彼の誠実さだ。

「私が勝ったら」

はっきりと言う。

「あなたは、私のすることを見守る。
 止めない。口も出さない」

 しばしの沈黙。

「……お嬢様は、私に勝てたことなどないでしょう」

事実だ。
それでも、私は笑った。

「次は勝つよ」

自分でも驚くほど、軽い声だった。

セナは私をじっと見つめ、やがて小さく息を吐いた。

「……分かりました。いつにしますか」

「じゃあ、明日」

逃げ道は作らない。

「承知しました」

それだけ言って、セナは踵を返した。

 ***

 翌日。

私は用意を入念に済ませていた。
剣、装備、魔宝石。
そして、仲間との合図。

日にちを空けすぎれば、セナは準備を整え、
こちらの意図を読み切ってしまう。


胸の奥で、不安が蠢く。
けれど、それ以上に――確信があった。

上手くいく。
 ――絶対に。

私は剣を握りしめ、静かに息を吐いた。

守られるためじゃない。
進むために。

今日、私は――
勝ちにいく。