夜明けが世界を染めるころ

セナside

馬車が走り出し前に座っているお嬢様に声をかける。

「よくわかりますね、馬の見分け方」

「わかるよ、全然違うもん」

2人のときは砕けた話し方をすることを許されている。お嬢様は堅苦しいのが苦手なようで気を許している人物に対しては緩く話してくれる。それが俺は嬉しい。

「そうですか?俺には一緒に見える」
首を傾げる。 本当にわからない。

「毛色も少し違うでしょ?リントは赤みがかった茶色でランは少し黄色みがかってる。それに目の形も違うよ。リントのほうが吊り目でランは少し垂れ目だよ」

そういったティアナお嬢様に対し、

「…正直わからないですよ。お嬢様とトムさんぐらいじゃないですかね」
何十頭もいる馬たちの名前を把握し、間違えないで覚えているのは…恐ろしいぐらいの観察眼。

お嬢様は昔から人の名前や顔を覚えるのが早かった。
その人の仕草や癖を見抜くのも上手い。

きれいなスミレ色と桃色の髪は綺麗に結ってある。
星空のように深い碧い瞳。白い肌。お嬢様は綺麗だ。
だから気になる。


「また寝不足ですね」
ズバリ言い当てると、うわっとした顔をする。

「え、わかる?アリスに綺麗にしてもらったんだけどな」
目の下にできたクマも、上手に隠してもらったはず。

「わかりますよ。化粧で上手に隠せてますが、少し目が充血していますし、唇も乾燥気味ですね」

この人は、また夜遅くまで仕事をし、朝早くから仕事をしているのだろう。人に任せるのが下手な人。だけど努力家で誠実な人。