勇者の舞台
〜大好きな観客達〜
舞台は534年
私は、生まれた時から勇者だ、みなを助け、幸せを与える勇者、最後の勇者で無くてはいけなかった、
母は優しく、このことを嬉しそうに、姉は励ましの言葉と共に愛のこもった少し足りないハグを、妹は小さな紙に書いた絵を、手紙を、キラキラとした目に憧れを抱き、家族は私に、盛大な拍手を、
悪を倒すため、私は舞台で踊る勇者のように、見物され、美しくなくてはいけない、いつだって、ミスをすれば、きっと、そこに赤黒く、愛する人がほおり投げられるでしょう、
母はいつも寝る前、幼い私に本を読んでくれる、瑠璃色の靴を履いた姫が、敵を倒し、旅をする話、この話に思入れがある訳でもなく、好きな本でもないが、何も考えていない時、喧嘩した時、いつも、頭の中には、あの本の物語が母の声でリピートされる、盛大に評価される程の物語でのない、ただ、それなのに、いつも、感情がぐちゃぐちゃにかき乱される気分になる、
花の花弁が落ちる時、姉は私に、一言、「私みたいになっちゃダメよ、端くれ勇者に、」姉は元勇者である、端くれ勇者、姉は悪を倒せなかった、恐怖で、身体が動かなかったと、そいつは戦う前、姉に名乗ったそう、名前は「e・デール・ジュエ」彼女は、彼女の目は恐れなく、一切の光を断ち切る目をしていたそう、まるで、悪魔のようだと姉は語る、姉は思わず、立ち尽くしたそう、全身が押しつぶされるように、
妹が、私に聞いた、「敵はどんな姿をしているの?」妹の目は真実を見る目だった、敵は、そう、敵は私たちと同じ形をした、姿、私たちと同じ人間、命があって、呼吸をしていて、思いやりという心があり、感情という脈もある、こんなにも似ているのに、たった少しの入れ違いでこんなにも残酷な結果になってしまう、なんて無惨なんだろう、
歳を重ねるうち、私も、行かなければない、あの手紙が来た瞬間から、私は勇者であり、舞台の演劇者、家族は盛大に祝った、最後には泣き、最後のハグと共に、私に耳打ちした、「生きて帰ってきなさい、あの犠牲に、意味を。下すのです、罰を、罪を、そして、私に、あの子達に言うのです、これで終わりだ、戦争は、私たちは自由だ、食べて、飲んで、遊んで、嘘をついて、勉強し、笑って、誰よりも自由なんだ、全部私のおかげなんだ、と、」私は少し頷いて、笑って見せた、「行ってきます、お母さん、お姉ちゃん、妹、」
最後は笑顔、帰ってきた時も、笑顔、死ぬ時も笑顔、仲間が死んだ時は悲しみを、
旅立ち、仲間を探す、共に、戦い、帰る仲間を、
一人の放流者と仲間になった、そして、2人、3人、4人と、それぞれ、私を含めず、3人、怪我をおっていた、1人は顔を、火傷だった、ただれた顔は痛く感じた、2人目は腕を無くしていた、不自由ではあるが、最後まで戦うのが勇者だと言った、3人目は足を失っていた、足を無くしても守るものがあるのだと、教えてくれた、
仲間の1人、腕を無くした仲間が言った、「これから、たくさんの戦いが待っているのね」と、剣を持ち、風に身を委ね、美しい髪と緩やかになびかれながら、
仲間が言った、足を失った、仲間が、「貴方にも、愛する人がいるの?」いると伝えた、それが家族だとも、仲間は「そう、私はもう会えない、彼方の想い人を愛し、戦う、」一昨年に起こった戦いか、それともまた別か、聞く気にはなれなかった、
顔がただれた仲間が、言った、「私は、敵国に潜入調査する予定なの、貴方達に合わせるつもりは無いわ、仲間のように笑い合うことも、助け合うことも無いわ、」了承はしがたい、皆呆然としていた、
私は仲間に伝えた、「この先、何があろうと、最低限、自分の身は自分で守ること、喧嘩は無し、これが、私達の仲間、」私の理想をを押し付けた、私も、仲間と仲良くしたい、ただ、このまま別れてしまうのが怖いだけ、
これで、何日たっただろう、数え切れない程、時間が経った、仲間達は仲良くなった、嬉しく思う、喧嘩をする時もあった、顔がただれた仲間が潜入調査すると言い出した時、足を失った仲間は激怒した、私は落ち着けと、腕を無くした仲間と共にその場を収めた、
私達はこの日、敵を撃とうと考えていた、だが、突然のこと、腕を無くした仲間が、死んだ、足を失った仲間は、声を上げ、泣いていた、顔がただれた仲間は声を押し殺し泣いていた、私は、淡々と感情のない、無意識な涙を流していた、きっとこれが地獄の始まりなのだろう、
次に足を失った仲間が無様に死んでいた、顔がただれた仲間が、怯えていた、「確かに、死はいつか来るもの、だけど、連続して、それも、今まで長い間、死なんて無かったのに、こんな短期間で死人が出るなんて、」私を見た、私も見つめ直した、「次はどっちかな、」顔がただれた仲間は、目を恐怖という紫に瞳を変え、部屋を出た、私は立ち尽くし、思い出す、足を失った仲間が放った最後の言葉、「私には死んだって、何年たとうって、愛しきれない人がいるの、ただ、私には、叶わぬことで、、私は、あの人のために生きていたかった、誰にも、愛されなくたっていい、偽でもいいから、あの人の隣に居たかったの、あいつらに、こんなにも、小さな、夢を、壊される世界は、強くも、優しくもない、恐ろしく、憎しい、そして、とても暖かい、この世界は洗脳に溢れている、偽だとわかっていながらも、口に出せば、首がぶら下がる毎日、何が、強く、逞しく、自分のままによ、こんなの、間違っている!」最期の彼女は、目は憎しみを目にまとい、温かさと、悲しみを体にまとっていた、
姉のようだった、この世界に不満を抱き、戦い疲れた、壊れたドール、この世界に、牙をむく愚か者、一体、彼女には、この世界がどう見えていたのか、どう感じていたのか、あぁ、やはり、難しい、理解するということは、共感することは、
顔がただれた仲間は、潜入調査を実行すると、私に伝えた、ならば私も行くと伝えた、
敵国の仲間を作った、彼女は私達を、倒すと、破ると話していた、私が”勇者”だと伝えるためだそう、
なんとも哀れで、愚かなのだろう、
特に、思入れはしなかった、ただ、顔がただれた仲間は、彼女に情を持ち始めている、不愉快である、敵国の娘に心を許すなど、あってはならないこと、
私は、ここを出ていくと、顔がただれた仲間に伝えた、仲間は、「元々は私だけ行く予定だった、構わない、」と行って、少し寂しそうにしていた、
これまで、私は何を得た、敵を倒し、敵の戦力を減らした、そして、理想の仲間を手に入れ、敵国の情報を手に入れた、私は一人、ふと、頭に聞こえる声、懐かしの母の声、そして、あの物語が、あぁ、疲れた、かなりの疲労が溜まっている、これまで、私は、私は、茨の道を、千里の道を、ずっと1人で歩いてきたのだろうか、果たして、仲間とともに、渡ってきたのだろうか、私はいつも独り、理想の仲間とは、私の得た栄光とは、_ 考えてもしょうがない、
敵国が攻めてきた、準備は出来ている、私は敵を打ち、打たれ、全てをかけた、そして、最後の戦い、私は彼女とあった、敵国の娘、ただ隣に、顔がただれた仲間はいなかった、全てを理解した、私は彼女に一言、「私は、守るものがある、」そう、私は貴方と違い、守るものがあり、貫き通さなければならないものがある、どちらが勇者か、だなんて、そんなもの関係なかった、ただ、私は、悲しかった、日記にだって書いた、敵国の娘との思い出を、思い出など書いても無駄だと分かっているのに、私は、私の理想の仲間は、彼女だった、少し抜けていて、私がカバーし、誰かを愛す、彼女が、大好きだった、記憶を消した思い出も、全部大好きだ、それなのに、こうやって、敵として、向き合う彼女の目は、「e・デール・ジュエ」は、私を、酷く冷めた目で見ていた、彼女との思い出も、全て、この剣で決まってしまう、これが運命なのだと、これが、私のゆく道なのだと、彼女を憎しみが溜まった剣と心で刺し、呼吸を乱す、彼女は倒れる、前が見えない、どうしてだろう、酷く掠れた声で彼女は最後に「守るのもが多すぎたんだね」とこもった一言告げ、自分の、自分だけの茨の道を進むのであった、
演劇の最終章、道の先にあるのは地面に突き刺さった石、私は、言う、「これで終わりだ、戦争は、私たちは自由だ、食べて、飲んで、遊んで、嘘をついて、勉強し、笑って、誰よりも自由なんだ、全部私のおかげなんだ、」涙を堪え、私は笑った、できるだけ大きく、笑った、この可笑しく、面白くもない演劇に幕を、終わりを告げるのです、私の愛した人達のために。
愛した演劇
〜誰もいない舞台〜

