泣き虫サンタクロースの恋

「あー、ハズいな。クリスマス一緒に過ごすの最後だからさ、何か欲しいもんあるのかって聞いた」

「待って……それって、拓斗がクリスマスプレゼントくれるってこと?」

拓斗が顔だけ振り返ると、綺麗な二重瞼をきゅっと細めた。
寒さのせいだとは思うが頬がわずかに赤い。

「どう考えてもそうだろっ」

「な、なんで私が怒られてるの?」

「ばか。もう疑問系で返してくんな。で?」

「ええっと……」


拓斗は信号が青に変わるのを見て、またゆっくりとペダルを漕ぎ始める。

(欲しいもの……)

そんなのひとつしかない。
来年も再来年も拓斗の隣にいたい。

でも、拓斗の隣が欲しい──なんて漫画みたいな恥ずかしいセリフ、弱虫で意地っ張りで可愛げのない私には天地がひっくり返っても言えっこない。

「菜緒?」

「……ずっと、持っておけるものがいい」

拓斗の隣と言えない私の精一杯の返事だ。

拓斗からプレゼントを貰えるのなら、食べ物や消えてなくなるものは嫌だった。

ここまで拗らせてるのだから、このどうしようもない恋心と一緒に思い出としてそばに置いておけるものが欲しい。