泣き虫サンタクロースの恋

わかっていても胸はずきんと痛む。
そして想いを伝えられない、弱虫の自分に嫌気までさしてくる。

(はぁあ……)

顔が見られないのをいいことに拓斗の後ろで私は暗い顔をして俯く。

その時、自転車が速度を落とすと緩やかに停車した。

「どした?」

「えっ?」

はっとして顔をあげれば、横断歩道の先に赤信号が見えた。この信号を渡って公園を右手に曲がれば家に着く。

「なんか菜緒、急に黙るから」

「あ、えっと……クリスマス終わったら、すぐ卒業だなって」

「ああ。そうだな」

行き交う車とバイクを見つめながら、青信号になるのを待つ。

「てことは……最後だよな」

「ん?」

「クリスマス一緒に過ごすの」

拓斗は前を見つめたままで表情はわからない。

「う、ん。そうだね……」

私は拓斗の腰に回した手にぎゅっと力を込めた。

「……何か欲しいもんある?」

「……え?……いま、なんて言ったの?」