泣き虫サンタクロースの恋

「そういえば、お前クリスマスどーすんの? 母さんがケーキ食べにおいでって言ってたけど」

「え、今年もいいの?」

「いいってゆうか、母さん張り切っててさ。誕生日の俺より、菜緒に食べて欲しいってどういうことだよ」

「あはは、嬉しい。おばさんのケーキ絶品なんだもん」

拓斗のお母さんは看護師の傍ら、お菓子作りが趣味で私が小さい頃から誕生日には必ず手作りケーキを届けてくれている。

「今年もイチゴかな?」

「俺の苦手なチョコレートケーキとか嫌がらせすぎんだろ」

「って、ワンチャン?」

「ねぇわ」


拓斗の後ろで声を上げて笑う。こんなくだらなくて、どうでもいいやり取りを小さな幸せだと感じるようになって何年経つだろう。

無条件にこれからもずっと一緒だなんて思っていた子供のころとは違う。

私たちは来年から、それぞれの道を未来に向かって別々に歩んでいく。

大人になるってそういうこと。

(来年から拓斗はもう……隣にいないんだ)