泣き虫サンタクロースの恋

肩をグーパンしても拓斗は「はは」と笑ってやり過ごす。
その拓斗の変わらない優しさに、胸がぎゅっと苦しくなった。

コンビニなんて家から歩いていける距離にあって、私のバイト先は自転車で15分はかかる距離だ。
“ついで”の距離なんかじゃない。
なのに私のラインひとつでこうして迎えにきてくれるんだから、やんなる。

(諦められないの、拓斗のせいなんだから)


去年の11月の終わり頃、拓斗に彼女ができた。

それを本人の口からではなく、人づてに知った私はショックで、当時編みかけだったマフラーをクローゼットの奥に押し込んだ。

――伝えるはずだった、私の想いも一緒に……。

結局、クリスマスよりも前に彼女に振られたとかで、誕生日当日は「慰めて」って泣きついてきた拓斗と一緒にクリスマスケーキを食べたのだけど……。

『別れると気まずくて、付き合う前と同じってわけにはいかないもんだな』

慰めてって言う割には呑気にそう言った拓斗のその言葉を聞いて、私は想いを伝えなくてよかった、とほっとした。

そして同時に、もし想いを伝えていたらどうなっていただろう、と怖くなった。