泣き虫サンタクロースの恋

私のお母さんは、こういうイベント系はめんどくさいって全然やる気なし。

だから今日だってチキンもなければケーキもない。もちろんプレゼントも小学生で打ち切り。
そんなんだから、うちの家族まで拓斗のお母さんのケーキのおこぼれを楽しみにしてるくらいだ。

「……今年は俺が出したんだよ」

気付いたら拓斗がすぐ後ろに立っていた。
中に進んで、とりあえずマフラーの入った紙袋を椅子の上に置く。

「手伝ってえらいじゃん」

「違う。俺が出したかったから出したの。母さん、今年は仕事でパーティーできないからツリーも出さないって言うから」

「ふーん?」

拓斗がそんなにクリスマスに思い入れがあるとは知らなかったな。
可愛いとこあるじゃん、なんて呑気に思ってたら、

「せっかく菜緒と二人でパーティーなのに、ツリーないと味気ないじゃん」

なんてセリフが飛んできて、私はその場で固まってしまった。

(は……? 今、なんて言った?)

せっかく?
二人?
味気ない?

口を開けば憎まれ口しか言わないような拓斗から、まさかそんな言葉が出てくるなんて予想してなくて。
固まった思考のまま、彼の真意を図るべく見上げた私。

そっぽを向いた拓斗の照れ顔に当てられて、顔がかぁっと熱くなった。

(なになになに、この甘い空気! やめてよ、期待しちゃう……っ)