泣き虫サンタクロースの恋

「メリークリスマス!」

インターホンを鳴らして、すぐに玄関ドアが開かれたその瞬間、私は百均で買ったクラッカーの紐を引っ張った。

パァンッという破裂音と共に色とりどりのキラキラテープが飛び出て、目を瞑った拓斗の頭に降りかかる。

「ドッキリ大成功」

「……お前なぁ……」

あきれ顔でこっちを見る拓斗に、へへへと笑って私は中へと滑り込むようにして上がった。 

こうでもしないと、緊張でどうにかなりそうだった。

(だって、二人きりだなんて聞いてない……)

拓斗のお母さんは夜勤で、お父さんは接待でいないって知ったのはつい数日前のこと。

去年は二人とも居てみんなでわいわいクリスマスパーティーをしたから、てっきり今日もそんな感じかなって思ってたのに……。

クリスマスの夜に、好きな人と二人きりなんて……。

マフラーのラッピング材料を買いに行った百均で目についたクラッカーを、気付いたら買っていた。
拓斗の驚く顔を見て、ほんの少しいつもの自分に近づけたからこっちも大成功かな。

「お邪魔しまーす」

「おい、ゴミ片付けろよ」

玄関に散らばったクラッカーのキラキラを、拓斗が拾っているのをよそ目にリビングドアを開ければ、電飾にライトアップされた大き目のクリスマスツリーが私を出迎えてくれた。


「おばさん忙しいのにツリー出しててえらいねぇ。うちなんか数年前からもう飾らなくなったよ」