泣き虫サンタクロースの恋



「お疲れ様でしたー」

「おう、菜緒ちゃん、気をつけてね」

私こと柊菜緒(ひいらぎなお)はバイト先のラーメン店『まいど屋』の店主に笑顔を返すと、裏口から外へ出た。

「さむっ」

今夏が猛暑だったせいか、今年の冬は例年よりもやけに寒く感じる。私は鼻先を掠めていく真冬の風に慌ててマフラーで口元を覆った。

「クリスマスか……」

ぽつりと呟いた声は、すぐに白い吐息と共に夜空に吸い込まれていく。

私はいつものように店裏の自転車置き場に向かおうとして、足を止めた。

「そうだ……自転車パンクしたからバスで来たんだった」

自宅からバイト先のラーメン屋まで自転車なら十五分程度だが、歩きとなると三十分はかかる。私は自転車を修理に出したその足でバスに揺られて、駅からすぐのこのラーメン屋までやってきたのを思い出した。

(バスの時間、いいのあるかな……)