妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 二人で街を歩いていく。
 ネレイダの街は白塗りの建物が多かったけれど、ここはレンガ調の建物が多い。そして一番の違いは地面ではないだろうか。ネレイダとは違い、白くふわふわとしている。
 アダン様曰く、ここは空の上……雲の上らしい。そのため、よく霧が現れるのだとか。

「君は以前街に繰り出した時、首飾りをよく見ていただろう?」

 思わず私はアダン様から貰った首飾りを握りしめた。許可証とは別に、イルゼに勧められて着けてきたソレ。毎日付けて無くすのは申し訳ないと思って、特別な時だけ身につけるようにしている。
 あの時は、飾りが綺麗だなと見ていただけだったのだけれど……。
 
 私はアダン様の顔を見る。
 彼は不思議そうな表情で私を見つめ返してきた。彼はそんなところまで見ていてくれているのか、と思う。私の心が少しずつ温かくなっていく。
 もしかしたら、アダン様の言う通り……私は装飾品を眺めるのが好きなのかもしれない。

「ありがとうございます。行ってみたいです」

 そう微笑むと、アダン様は目を瞬いた後、優しく微笑んでくれた。

 私はアダン様の横について歩く。
 空の街はネレイダに比べて道を歩いている人が多いような気がする。そのことをアダン様へと話せば、空の街の方が人が多いのだと教えてくださった。
 ネレイダとも違う、元の国とも違う光景に、私は無意識に周辺を見回しながら歩いていた。すると急に肩に手を置かれたと思ったら、私の右腕に温かいものが当たる。その瞬間、私のすぐ横を人が通り過ぎた。

 思わず顔を上げると、そこにはアダン様の顔。どうやら私はアダン様に助けられたらしい。周囲を見ていなかったことを反省する。

「アダン様、申し訳ございません……」
 
 私がきちんと前を見て歩いていれば、彼に迷惑を掛けることなどなかったのに。自分がいかに浮かれていたか……自分に失望する。
 私がそれで肩を落としていたからだろうか。アダン様が私に声を掛けてくださった。

「謝らなくていい。ここは人が多いからな」
 
 そう言って彼は手を私の左肩に乗せたまま歩く。てっきり助けてくださった後は、肩の手を離すものだと思っていた私は、アダン様の行動に目を丸くする。
 手の温もりを感じながら、今度は人とぶつからないように前を向く。周囲はアダン様を国王様だと知らないのだろう。友人、家族……もしくは恋人と楽しそうに話して去っていく。
 心なしかアダン様の表情も緩んでいるような気がするのは気のせいだろうか。

 触れられることに慣れておらず、肩が強張る私。そして度々私が人とすれ違うと、私とアダン様の身体が触れる。その一瞬が起こる度に、私の胸は高鳴っていた。