妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 耳打ちが終わった後、セファーさんが私へと顔を向ける。彼は私へと声をかけた。

「アダンも必要事項を全てすっ飛ばすからさぁ……エーヴァちゃんも訊ねるといいよ! 『いつ?』『どこで?』って。分からないものを一個ずつ聞いたって……アダンは怒らないでしょ?」

 彼はアダン様の方へ振り向くと微笑んだ。その笑顔に少し圧があるような……いや、気のせいだろう。
 むしろ私はセファーさんの言葉に目から鱗が落ちるような気分だった。そっか、ひとつひとつ聞いていけば良いんだ、と。
 思えばノアの話の中でもたまに分からないところがあったけれど……そこはいつもノアが察して話してくれていた。随分彼に助けられていたんだな、と思う。
 今度から、自分で聞いてみれば良いのだ。
 
「アダンも自分の頭の中で完結させないで、必要なことを全部言ってみたら良いんだよ〜。別に僕らもノアも……エーヴァちゃんだって、アダンを拒否することはないと思うからさ。あまりにも配慮のない言葉は別だけど、アダンがそんな言葉を吐くことはないでしょ?」
 
 アダン様は目を見開いてから「そうだな」と呟く。そんな彼の様子を見たセファーさんは、慈愛の視線をアダン様へと送る。

「相手の考えていることなんて分からないんだから、君たちはもう少し言葉にするべきだね」
「言葉に……」

 無意識に呟く。私はセファーさんへ顔を向けると、彼と視線がかち合う。彼の言葉を反芻した後、私は拳を握りしめた後、顎を上げた。
 アダン様やセファーさんが、あの人達と一緒の態度を取るはずがない。そう思いながら、私は口を開いた。

「あの……アダン様……。お出かけは今日ですか?」

 意を決して訊ねると、セファーさんは息を呑んでいる。アダン様も私が何かを尋ねてきたことに驚きを隠せていなかった。その後すぐにアダン様は考え込んでから告げた。

「いや、今日じゃない。今度……一週間後ぐらいだろうか」
「日程は決まっているのですか?」
「あちらのから許可の連絡がまだ来ていない」

 許可が必要な場所なのか、と納得しているとアダン様が話を続けた。
 
「今回行くのは、空の街だ」
「空の街……」

 もしかしたら、空の神様が加護を与えているという街だろうか。首を傾げていると、セファーさんが私に補足してくれる。

「昨日読んだ本の中に、空の神様が加護を与えている街があるって書いてなかったぁ? その街のことだよ!」
 
 セファーさん曰く、他の加護のある街に入るには、許可が必要になるそうだ。イグナスさんはネレイダに来る際は、毎度申請してこの国に来るのだとか。
 ただ一度申請許可が降りたら、二度目以降は手続きが簡素化するらしい。私は相槌を打ちながら、彼の話に耳を傾けた。
 
 他の国を見に行くことができるなんて、と嬉しい反面……行って良いのだろうかと疑問が起こる。私は恐る恐る、アダン様に訊ねてみた。

「あの、私が行っても良いのでしょうか……?」
「ああ、問題ない。ノアも行くからな」
「ちなみに僕も行く予定だよぉ〜」

 私は目を見開いた後、無言で頷いた。