妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 完全に落ち着きを取り戻した私は、図書館へと足を運んでいた。
 この世界のことについて把握しようと思った私はイルゼさんに相談すると、図書館を紹介されたのだ。足を踏み入れると、辺り一面……本が至る所に置かれている。

 公爵家にも図書室があり、一度だけ入ったことがあるのだけれど……そことは比べ物にならないほどの大量の本がある。棚には仕切りの札が差し込まれており、分類が書かれている。ひとつひとつ棚の分類を確認しようと歩き始めたその時、私は後ろから声を掛けられた。
 
「あ、エーヴァちゃんだ!」
 
 振り向くとそこにいたのはセファーさんだ。人懐っこい笑顔で手を振る彼を見て、私は目を丸くした。

「セファーさん、どうしてここに?」
「ん? 僕? 僕はここの管理人だからね」

 聞けば、セファーさんはここの図書室の本を管理しているらしい。基本はここにいて、たまに散歩も兼ねて王宮内を見回っているのだとか。

「エーヴァちゃんはどうして図書館に?」
「えっと、この世界について知りたいと思いまして……」
 
 そう告げれば、セファーさんは何故か私を穴が開きそうなほど見つめてくる。しばらく私をじっと見つめた後、彼は満足げに微笑んだ。

「うん、以前より顔色が良くなったね! 良かったぁ!」

 手を合わせて喜ぶセファーさん。どうやら私を心配してくれたらしい。
 
「ありがとうございます」

 そう笑って告げる。最初は少し驚いたような表情を見せたセファーさんだったけれど、すぐに口角を上げた。彼の目には慈愛が溢れている。

「もう大丈夫だね……あ、そうだ! この世界について書かれている本だね……あー、あそこの本が良いかもしれない!」

 にっこりと笑った彼は私に背を向ける。楽しげに飛び跳ねて歩くセファーさんを追って私も足早についていった。

「この棚だよ〜」

 私が求めている本は、二階の奥まった場所にあった。一階に比べて本棚が高く、私の背を軽々と越している。セファーさん曰く、本の題名を口に出せば自動的に手元へと来るようになっているようだ。便利な魔法の使い方に感心する。
 彼にお礼を告げて、本の背表紙を見ようとしたところで……ふと後ろからセファーさんが呟いた。

「君が次に手に取った本、それが君の運命かもしれないね」

 もう一度聞き直そうと後ろにいるセファーさんへと顔を向ける。けれども、そこにはもう既に誰もいなかった。最初は呆然としていた私だったけれど、気を取り直して本棚に目を向ける。

 特に多いのが神話と歴史の本だろうか。
 
 色々な本があるんだな、と嘆息を漏らしていた私だったが、ある本の題名が目に入る。それは、『神託を受けた者と異なる者が身を投げた国の末路』という表題だった。