一目見た時から、過去の自分に似ていると感じていたのだ。あの、何をしでかすか分からない時の自分に。それを分かっていて、踏み込もうとしなかったのはアダン。彼女の心に寄り添う必要があったのではないか、と思っていた。
そんなことを考えているうちに、いつの間にか書類仕事は終わる。疲れを取るために目頭を揉んでいると、レナートが各部署へと書類を届けるために出て行く。
彼と入れ替わりで入ってきたのは、イルゼから伝言を受けた侍女だった。彼女はエーヴァに関する報告を上げる。彼女はノアと楽しく話をした後、疲れからか眠っているようだ。この後は交代で彼女の様子を見るとのこと。
報告を受けたアダンは、胸を撫で下ろす。ひとまず、彼女の件は安心だろう。
ひと段落したアダンが両手を上げて背中を伸ばしていると、「やぁ」と声がする。そこにいたのは、セファーだった。
「エーヴァちゃん、大丈夫そう?」
「ああ。今は落ち着いている」
「ありがとう。助かったよ、アダン」
セファーはアダンにお礼を告げる。ただ、そんな彼の声に普段のような元気さはない。それだけではなく、常々飄々と……時には悪い笑みを見せながら話すセファーの面影すらなく。
彼が苦虫を嚙みつぶしたような表情をしているところを見て、珍しいとアダンは思う。
今回のエーヴァの件、不可解な点が多い。
ここ一ヶ月以上彼女と接してきて、エーヴァは思慮深く……慎重にことを運ぶ性格だと判断していた。あのように突発的な行動をとる姿を想像できなかったからだ。
それを裏付けるかのような使用人の報告。
彼女があの境界へと向かっている時、不自然な様子だという報せが届いたのだ。普段のエーヴァであれば、にこやかに挨拶をする。すれ違う使用人皆に声を掛けるので「可愛らしい」と評判なほどだ。
しかし、あの時の彼女は目の焦点が合っておらず、前のめりになり、何かを小声でずっと呟いていたのだという。
だから使用人も私に報告してきたのだと言っていた。
そのお陰でアダンはエーヴァが泉へと足を踏み入れて、すぐに引き戻すことができたのである。
後でエーヴァの話を聞きたいとは思っているが、彼女に思い出させるのも気が引ける。後でノアから話を聞こうと思い立った時、目の前にいたセファーと目が合った。
セファーはの瞳には言葉にならない思いが滲んでいる。彼は何かしら知っているのかもしれないが、神や天使は色々と制限があると聞く。きっと分かっていても、伝えられないのかもしれない。
アダンは静かに彼の様子を窺う。
最初は考え込んでいたセファーだったが、しばらくすると口を小さく開けてまごまごと呟き始めた。
「もしかしたら、この件は僕のせいかもしれない」
そんなことを考えているうちに、いつの間にか書類仕事は終わる。疲れを取るために目頭を揉んでいると、レナートが各部署へと書類を届けるために出て行く。
彼と入れ替わりで入ってきたのは、イルゼから伝言を受けた侍女だった。彼女はエーヴァに関する報告を上げる。彼女はノアと楽しく話をした後、疲れからか眠っているようだ。この後は交代で彼女の様子を見るとのこと。
報告を受けたアダンは、胸を撫で下ろす。ひとまず、彼女の件は安心だろう。
ひと段落したアダンが両手を上げて背中を伸ばしていると、「やぁ」と声がする。そこにいたのは、セファーだった。
「エーヴァちゃん、大丈夫そう?」
「ああ。今は落ち着いている」
「ありがとう。助かったよ、アダン」
セファーはアダンにお礼を告げる。ただ、そんな彼の声に普段のような元気さはない。それだけではなく、常々飄々と……時には悪い笑みを見せながら話すセファーの面影すらなく。
彼が苦虫を嚙みつぶしたような表情をしているところを見て、珍しいとアダンは思う。
今回のエーヴァの件、不可解な点が多い。
ここ一ヶ月以上彼女と接してきて、エーヴァは思慮深く……慎重にことを運ぶ性格だと判断していた。あのように突発的な行動をとる姿を想像できなかったからだ。
それを裏付けるかのような使用人の報告。
彼女があの境界へと向かっている時、不自然な様子だという報せが届いたのだ。普段のエーヴァであれば、にこやかに挨拶をする。すれ違う使用人皆に声を掛けるので「可愛らしい」と評判なほどだ。
しかし、あの時の彼女は目の焦点が合っておらず、前のめりになり、何かを小声でずっと呟いていたのだという。
だから使用人も私に報告してきたのだと言っていた。
そのお陰でアダンはエーヴァが泉へと足を踏み入れて、すぐに引き戻すことができたのである。
後でエーヴァの話を聞きたいとは思っているが、彼女に思い出させるのも気が引ける。後でノアから話を聞こうと思い立った時、目の前にいたセファーと目が合った。
セファーはの瞳には言葉にならない思いが滲んでいる。彼は何かしら知っているのかもしれないが、神や天使は色々と制限があると聞く。きっと分かっていても、伝えられないのかもしれない。
アダンは静かに彼の様子を窺う。
最初は考え込んでいたセファーだったが、しばらくすると口を小さく開けてまごまごと呟き始めた。
「もしかしたら、この件は僕のせいかもしれない」


