妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 葬式後はエーヴァを徹底的に別邸へと締め出した。食事は一日一回硬いパンとスープ、そして使用人よりも早く起きて掃除をさせたの。そして綺麗に掃除ができていなければ、私とお母様から折檻があったのよ。
 だって、使えない使用人を躾けるのも、女主人の仕事でしょう? 私はお母様の手伝いをしただけよ。

 それに日々溜まった鬱憤を晴らすのに丁度良かったのよ。嫌味もよく言っていたし……。もう退屈凌ぎにエーヴァを虐めることはできないけれど、元々鬱屈の原因はエーヴァだし? いなくなったら、憂さ晴らしする必要もなくなるわね。

 これからの日々は、きっと快適に過ごせるだろうと想いを巡らせた私は、思わず口角が上がる。
 すると私の様子を見たのか、お父様も微笑んでいた。よく見ると頬が少し赤らんでいる。結構な速度でワインを嗜んでいるからかしら? エーヴァを追い出すことがお父様の悲願であったらしいもの。本当はどこかの金持ちの後妻にさせようかと目論んでいたようだけれども……まさか聖務者としてこの家から放り出すとは思わなかったわ。
 聖務者として選ばれる理由は分からないけれど、神の御許に行けるのだもの。現在の我が家の名声は上々よ。

「リリスをエーヴァと名乗らせるのは納得いかんがな」
「お父様、それは仕方のないことですわ。我が家の発展のため、私はどんな責苦でも追うつもりです」

 お父様の言う通り、エーヴァの名を名乗らなくてはいけないけれど、それくらいどうってことないわ。
 巷では、私が王子殿下の婚約者候補として名が上がるのではないだろうか、とも言われているらしいのよ。あの有料物件である王子殿下の婚約者よ! そのためなら、エーヴァの名で過ごすくらい、問題ないわ。

 私のグラスには、ブドウで作られたジュースが入っている。お酒ではないので、実際酔うことはないけれど……私はこの空気に当てられて、気持ちが高揚していた。
 お父様とお母様も歓喜のためか、グラスがどんどん進んでいる。お父様はにっくきエーヴァを追い出せたことに、お母様は私が跡取りになることを祝福して。そんな祝杯気分で楽しくお酒が進んだところで、ふとお父様が私に声をかけた。
 
「リ……いや、エーヴァ。お前に対するやっかみか、最近悪評を流す者共が増えているようだ」
「あなたは本当に可愛らしくて、頭も良いし……公爵家の娘という地位権力もありますからね。妬む者がいても不思議ではありませんわ」

 お母様が、私は国で一番の娘であると褒め称えてくれる。私もそう思うわ。同意を示すためにも、首を縦に振った。するとお父様は眉間に皺を深く刻んでいる。私の言葉で不愉快にさせてしまったのだろうか、と思ったが杞憂だったようだ。

「本当にお前の言う通りだ。エーヴァは国で一番の可愛い娘。悪意ある噂は私が潰すから問題ない。それに、お前は国で一番幸せになるべき娘だ。私とカミラの娘なのだからな」
「お父様……!」

 私はお父様の言葉に感動し、目に涙が溜まる。そして感極まってお父様とお母様に抱きついた。後ろではその場にいた使用人が、布で涙を拭っている。どこからどう見ても、私が望んだ感動な場面だった。

 ――ねえ、エーヴァ……空から見ているかしら?
 お前がいなくなって、更に私は幸せよ。お父様の笑顔も見てちょうだい。本当に清々しい表情をしているわ。

 私は国で一番愛され、誰からも羨まれる幸せな女性になるのよ。お前を踏み台にしてね。

 私は陽気にはしゃぐお父様とお母様を見ながら、静かに口角を上げた。