妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 その日から、アダン様の雰囲気が変化したように思う。いや、私の気のせいかもしれないけれど……。

 今日も書類を担当部署に配達しようと、アダン様の元へ向かう。
 
「仕事が終わりましたので、こちら各部署へ渡してきますね」

 普段であれば、首を一度縦に振るだけだったアダン様。けれども、最近は顔を上げて私と視線を合わせるのだ。そして――
 
「ありがとう。いつも助かる」

 その時だけは……書類を見ている時の眉間の皺もなく、口角も少し上に上がっている。
 最初の頃その表情を見た周囲の者たちは、書類仕事最中に笑うアダン様に動揺していた。けれども、最近はもう慣れたのか、テキパキと仕事を続けている。
 私もその笑みに最初は見惚れていたけれど……きっと私に気を遣ってくれているのだろう、と思う。

 アダン様の心遣いに感謝しながら、私は仕事を頑張った。
 お礼を言われることがこんなに嬉しいことだなんて。心なしか仕事にも力が入る。

 ただイルゼさんからは、無茶をしないようにと言いつけられていることもあり、自分のできる範囲に絞ることにした。最近は体力が付いてきたからか、できる範囲が増えていることを実感しているが。
 たまに休憩と称してイルゼさんの着せ替え人形となる時があったりする。……どうやら女神祭で着ていく服を選んでくれるのだそう。

「エーヴァちゃんは誰と行きたい?」

 そう聞かれて、私頭に思い浮かんだのは水色の瞳のあの方だ。私はその瞬間、頬が急に熱くなったような気がした。
 その後私は、しどろもどろになりながらも「ノアでしょうか……」と言ったけれど、イルゼさんはそんな私の言葉に微笑んだ後、水色のドレスを私にあてていた。