妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 だから矢継ぎ早に、言葉を紡ぐ。
 どうやら彼女はアダンの言葉に驚いていただけらしい。何度も瞬きを繰り返すエーヴァを見て、彼は肯定する。彼女が周囲からどう思われているのか、ここで伝える必要があると思ったのだ。

 だが、その話をした途端……彼女の目から涙がこぼれ落ちる。
 アダンはそんな彼女の様子に目を丸くした。言葉を間違えたのか、と思ったからだ。
 
 しかし、その考えは杞憂だったらしい。

「わ、わたしは……みなさまの……助けに……なれて……いるの……ですね……うれし……い」

 涙を流しながら笑う彼女の顔には、先ほど滲み出ていた翳りは消え去っている。エーヴァに思いが伝わったのだろう。
 彼女は俯いているため、アダンからは頭の天辺しか見えなかった。けれども彼女の瞳から流れている涙は悲しみから来るものではなく、嬉しさから来るものだとアダンには理解できる。
 
 アダンは無意識に彼女の頭に手を置いていた。昔ノアにこれをやった時、喜ばれたことを思い出したのだ。
 エーヴァは彼の行動に驚いたのか、彼女の目からこぼれていた涙が一瞬で止まった。そして呆然とアダンの顔を見ている。
 彼はエーヴァに伝わるように、と願いながら言葉を続けた。
 
「ああ、君は頑張ってくれている。その頑張りは本当にありがたい。ただ、ひとつだけ、お願いしたいことがある……無理はしないでほしい。君が倒れたら、私が悲しい。いや、私だけじゃない。ノアだって、イルゼだって……皆が悲しい」

 最初は口を半開きにしていた彼女も、アダンの言葉を理解し始めたようだ。目に溜まっていた涙がこぼれ落ちる。けれどもそれは、悲しみの涙ではない。
 嬉しさから微笑みを浮かべた彼女の目から、残った涙が流れただけだ。
 
「ありがとう……ございます……アダン様」
 
 彼女の表情と言葉で、アダンは自分の想いが伝わったのだと理解した。そして彼の重く閉ざされていた心の扉も押し開けられていく。
 気がつけばアダンは、彼自身が驚くであろうほど穏やかな笑みを口元にたたえていた。