妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 ――不意に私の頭に温かいものが乗った。

 驚きからか、涙が一瞬止まる。そっと顔を上げると、目の前にいたのはアダン様。彼は私の頭の上に手を乗せていたようだ。
 何が起きたのか理解できずに目を瞬かせていると、彼は私に視線を合わせるために片膝立ちになった。そして頭の手を優しく動かす。

「ああ、君は頑張ってくれている。その頑張りは本当にありがたい。ただ、ひとつだけ、お願いしたいことがある」

 珍しいアダン様のお願い。口を半開きのまま私はアダン様の顔を見る。その表情は間抜けだっただろう。

「無理はしないでほしい。君が倒れたら、私が悲しい。いや、私だけじゃない。ノアだって、イルゼだって……皆が悲しい」
「……はい」
 
 アダン様には少し無理をしていたことに気づかれていたようだ。私は心の中からじんわりと温かなものが溢れていることに気がつく。王国ではあり得なかった感情が、胸いっぱいに広がる。

「ありがとう……ございます……アダン様」

 そう伝えると、彼は口角を上げ、今までに見たことがないほど……美しい笑みを見せた。
 
 涙が止まった私とアダン様は、引き続きお茶を嗜んでいた。
 ポツポツとアダン様がお話ししてくださったのだが、このお茶はアダン様が一時期身体を壊しそうなほど、仕事をしていた時、レナートさんが見兼ねて淹れてくれたお茶だと言う。
 
 だから優しい味がするのかな、と話を聞いていて私は思った。