妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 彼女は泉に入水し、命を絶ったはずではないか。
 
 私たちは同時にベレナドへ顔を向ける。

「こちらは、指定された場所を覗くことができる道具です。このように特殊な能力がある道具を、我々は魔道具と呼んでおります」
「魔道具……? そういえば王家の宝物庫にそのようなモノがある話は聞いたことがあるが……それと同じか?」
「ええ。まぁ、王家のモノより私の持っている魔道具の方が高性能だと思いますが」

 確かに違う場所を覗くことのできる魔道具なんて聞いたことがない。お父様は眉間に皺を寄せた。

「で、私たちは何をしたらいいのか、教えてもらえるか?」
「それなのですが……少々長い話になりますが、お聞きくださると恐縮です」
 
 そう告げて話し出したベルナドの言葉に、私たちは驚かされた。

 彼曰く、今エーヴァがいる場所は『泉の底に造られた街』なのだとか。この街は女神デューデ様の加護を得ており、彼が持っているような魔道具を量産しているのだそう。
 まるで夢世界のような話に、最初は付いていけなかった私たち。けれども、水晶玉の映像を見続けた私たちは、ベルナドの言葉が事実であると認識し始めていた。
 私の耳にベルナドの言葉が入ってくるけれど……反対の耳から抜けていく。その時私は、エーヴァが男性の隣で幸せそうに笑っている姿が目に入ったのだ。

 ――なぜお前が幸せそうなの?
 ――お前は疫病神だったはずでしょう?

 胸の中に燻っていた影が段々と大きくなり、私の心を黒く塗りつぶす。
 私を差し置いて、何故エーヴァが幸せな表情を浮かべているのか……それを頭で理解し始めると同時に、怒りの感情も芽生え始めてくる。

 エーヴァは私より惨めでなくてはならないの。
 エーヴァは私より幸せになってはいけない。
 あいつより私の方が両親に愛されているのだから、あいつが笑顔なのはおかしい。

 私の心の内が深い闇に染まった頃、話を聞き終えたお父様が口を開いた。

「分かった。お前の話を信じよう。では、我々はどうしたらいい?」

 お父様の言葉に私もお母様も首を縦に振る。エーヴァのこの笑顔を私が引き裂いてやりたいからだ。ベルナドは私たちが協力する様子を見せたからか、微笑んで頭を下げる。

「では、ここから詳細な話をさせていただきますね。まずはこちらをご覧ください」

 にこやかに告げるベルナド。私たちはテーブルの上に置かれた資料へと目を通す。
 だから誰も気が付かなかった。彼が今までにはない……まるで悪魔のような笑みを湛えていたことに。