妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 そう公爵が結論付けた結果、彼の憤りは最高潮にまで達していた。彼は隣にいるリリスに向けて、取り繕うことなく()()()()()に声を上げていた。
 
()()()! お前のせいで……お前のせいで……!」
 
 隣で今まで聞いたこともないような大声で叫び出した父親に、リリスは目を瞬かせる。そしてその怒髪天を衝く勢いに、彼女は顔を青褪めた。そんな彼女をそのまま問い詰めようとした公爵だったが、それは許されない。

「ほう、公爵。その娘は()()()()、ではなかったのか?」

 地を這うような、低い、低い声。まるで人生の終わりを予感させる、奈落の底から響き渡るよう。
 
 ――公爵は陛下の言葉で自分が墓穴を掘ったことに気がつく。

「あの、いえ、その……」

 先ほどの圧はどこへやら。
 公爵は今までにないほど身を縮こませ……何も言えないと言わんばかりに俯いた。このまま無言でやり過ごそう、そんな雰囲気も窺える。だが、周囲の空気がそれを許さない。
 陛下は教皇へと視線を送る。そして彼は、静かに口を開いた。

「グレイザント公爵、貴方は重大な禁忌を犯しております。そう、神の意向に背く、という禁忌を――」

 陛下とは違う、静かで感情の乗っていない淡々とした声。
 しかし、彼の目は雄弁に語っている。覚悟していた。教皇は既に公爵とリリスを大罪人として扱っており、そのような者たちには慈悲をかけるつもりなど、ない。

「教会から命令です。リリスを泉へ突き落としなさい」

 静まり返った室内で、教皇の声だけが響き渡る。先ほどまで王子たちを穴が開くほど見つめていたリリスまでもが、まるで引き寄せられるように教皇へと視線を送っていた。