妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 公爵の前に置かれた書類。陛下は顎を軽く突き出し、内容を見るように促す。
 公爵は恐る恐る紙を手に取り、目を滑らせる。そこに書かれていたのは、『リリスが仮面舞踏会に参加している』ことについて。その証拠が記されていた。夫妻がリリスに注意する前から、参加したという証拠は集められていた。
 それだけではない。注意後も、頻度は少なくなっているが……リリスが仮面舞踏会に参加していたという事実が判明していた。

 公爵はリリスへと顔を向ける。父親の苦労むなしく……彼女はこの事態を正確に把握している様子はなかった。リリスは既に第二王子と王太子へと顔を向けて、見惚れていたのだから。
 その瞬間、公爵はリリスの危機感の無さに怒りを覚える。今後のグレイザント公爵家のため、彼は邪魔者であった長女エーヴァを排除したのだ。そして今や公爵家は聖務者を輩出した家として、一目置かれていた……はずだ。
 
 ――何故このような事態に? 何故?

 公爵は頭の中で自問自答するが、その回答が現れることはない。代わりに公爵へ送られるのは、軽蔑、嫌悪、憎悪……全て悪意に満ちている。それもそのはず。公爵は聖務者を入れ替えるという()()()()()()()()
 王家だけではなく神の意向にも背いているのだから、周囲が敵意をむき出しにするの当然なのだが……残念ながら公爵はそれが理解できなかったようだ。

 周囲の視線に耐えきれなくなった公爵の胸中では、段々と怒りの感情が大きくなっていく。その怒りの矛先は、先ほどから呑気に頬を染めているリリスへと向けられていく。
 
 ……リリスが仮面舞踏会に行かなければ。