「重要な規約違反?」
リリスは陛下の言葉に首を傾げる。そんな不思議そうな表情をしている彼女を陛下は一瞥してから、彼女の存在をまるで無視するように公爵へと視線を注いだ。その視線にもちろん温度はない。
「この度、公爵家からリリス・グレイザントが聖務者として選ばれた。お前たちはその神託に則り、リリス・グレイザントを聖務者として差し出した。さて、ここで聞きたい。泉に身を投げた娘は、本当にリリス・グレイザントだったのか?」
公爵は陛下の言葉に目を見張る。それが側から見たら、質問の回答になるのだが……公爵はそのことに気がついていない。貴族として最低限身につけさせられるはずの、表情のコントロール。それが公爵であるにも関わらず、今はできていなかった。
一方でリリスは目を瞬いている。国王の言葉が理解できなかったのである。いや、正確に言えば言葉そのものは理解しているが、何故そのことを聞いてくるのかが分からなかったのだ。
答えは出ているも同然だが、そのことを察していない公爵は、言葉を紡いだ。
「もちろんです。リリスは立派に聖務者として――」
にこやかに話し始めた公爵。まだ挽回できるとでも思っているのだろう。
彼は聖務者としてリリスが泉へと身を投げたことを、ここにいる者たちへ主張しようとしたのだが……そうは問屋が卸さない。彼の話を遮るように、陛下が机を叩きつけた。その音に驚いた公爵とリリスは、身を縮め、息を詰める。
先ほどよりも更に目を吊り上げ、二人を睨みつける陛下。彼だけでない。その場にいる全員が、公爵とリリスの二人に絶対零度の視線を送っている。
二人は凍りついた場の空気に触れたことで、自分たちが置かれている立場を少しずつ理解し始めていた。緊張からか、息を呑む音でさえも普段より大きく聞こえている。
陛下は大音を立てた後、二人に厳しい視線を向けるだけで一言も喋らない。周囲の者たちも口を閉じたままだ。
「そうか、ならばこれはなんだ?」
リリスは陛下の言葉に首を傾げる。そんな不思議そうな表情をしている彼女を陛下は一瞥してから、彼女の存在をまるで無視するように公爵へと視線を注いだ。その視線にもちろん温度はない。
「この度、公爵家からリリス・グレイザントが聖務者として選ばれた。お前たちはその神託に則り、リリス・グレイザントを聖務者として差し出した。さて、ここで聞きたい。泉に身を投げた娘は、本当にリリス・グレイザントだったのか?」
公爵は陛下の言葉に目を見張る。それが側から見たら、質問の回答になるのだが……公爵はそのことに気がついていない。貴族として最低限身につけさせられるはずの、表情のコントロール。それが公爵であるにも関わらず、今はできていなかった。
一方でリリスは目を瞬いている。国王の言葉が理解できなかったのである。いや、正確に言えば言葉そのものは理解しているが、何故そのことを聞いてくるのかが分からなかったのだ。
答えは出ているも同然だが、そのことを察していない公爵は、言葉を紡いだ。
「もちろんです。リリスは立派に聖務者として――」
にこやかに話し始めた公爵。まだ挽回できるとでも思っているのだろう。
彼は聖務者としてリリスが泉へと身を投げたことを、ここにいる者たちへ主張しようとしたのだが……そうは問屋が卸さない。彼の話を遮るように、陛下が机を叩きつけた。その音に驚いた公爵とリリスは、身を縮め、息を詰める。
先ほどよりも更に目を吊り上げ、二人を睨みつける陛下。彼だけでない。その場にいる全員が、公爵とリリスの二人に絶対零度の視線を送っている。
二人は凍りついた場の空気に触れたことで、自分たちが置かれている立場を少しずつ理解し始めていた。緊張からか、息を呑む音でさえも普段より大きく聞こえている。
陛下は大音を立てた後、二人に厳しい視線を向けるだけで一言も喋らない。周囲の者たちも口を閉じたままだ。
「そうか、ならばこれはなんだ?」


