妹に代わり泉に身を投げた私、湖底の街で愛を知る 〜虐げられた私が幸せを築くまで〜

 それから幾ばくか経った頃、グレイザント公爵とエーヴァに扮するリリスは、陛下に呼び出された。なかなか進まない婚約式の話かと、胸を躍らせて王城へと参上した二人だったが、陛下のいる執務室へと入った瞬間……冷たい空気が背を走る。
 陛下の執務室内には、宰相、教皇、そしてそれ以外にも数人の重鎮が鎮座していた。また、彼女の婚約者である第二王子と王太子も着席している。

 リリスは重鎮たちの顔を見て、第二王子との婚約が()()()()()()()()()のだと、目を輝かせる。
 すると、ふと婚約者である第二王子と目が合った。リリスは自分が一番美しいと思う笑みをたたえるが、彼は見ていない……と言わんばかりに顔を正面に戻す。リリスはそんな婚約者に疑問を抱きながらも、相手が照れているのだろう、と判断した。

 一方彼女の親である公爵は、異様な雰囲気を感じ取っていた。
 そしてリリスとは違い、この命令は婚約式の件で呼ばれたのではない……と早々に判断する。そして全員の視線の厳しさから、彼の身体は小刻みに震え、血の気が引いていく。
 しかし、ここまで来た二人は逃げることすらできないのだ。

「さて、ここに呼び出したのは他でもない。公爵と我々との間に重大な規約違反が発生したことが判明した」