「ミウさん、クソ笑顔なのに今日も目が笑ってねえ。」
「職業病ってやつね。あ、キラ君ついでにうちの可燃ゴミ捨てといて?」
「悪いけど俺No.1だからゴミの捨て方知らねえんだわ。」
「ゴミ発言も甚だしいなおい。」
「ゴミ担当のキャバ嬢に言われたない。」
「悪いけどゴミ出しに担当も糞もないんですー。捨てれる人が捨てるし、開いたグラスにはすぐ注ぐ!」
「指名されなくても挨拶は行く!ドンピン入ったらシャンパンタワーからのお姫様だっこ!」
「あんたと喋ってる時間は1円にもならない!」
「そのとーり!はい、今日も」
「頑張って馬車馬のごとく稼ぎませう!」
ゴミ出しを終えた手はやたら清々しい。自分の手の平を見つめれば、生命線は本日も無事、程よい長さを保っている。
よし。まだ息はある。まだアフター7の余力はある。気合いを入れるようにポキポキと指を鳴らせば、どこかから聞こえる笑い声よりも明るい夜に響いた。
キラ君に「殺る気満々の殺し屋か。」と怪訝な目つきでツッコまれる。
さあ今日も今日とて、愉しいアフター7が始まる。
「ミウちゃーん!3番テーブル、商社のお得意さんが来てるから張り切っていってみよう!!」
始まる、のだが。
これは、ストーリーの始まりではない。
「こんばんわあ。ミウです!今日も会いに来てくれて、ミウ嬉しい。」
「待ってたよミウミウ〜」
今日を持って、私は卒業するのだから。
恐らくこれは、序章《始まり》の終わりなのだ。



