「こういうのは海老の形態を理解していれば出来るもんなんですよ。」
ホストクラブで海老の早剝き大会でもしたの?
でもキャバ嬢というステータスのある私の役目を、颯爽とかっさらっていったキラ君のそれは、きっと優しさなんかじゃない。ホストの性《さが》というやつで片付ければいいのだと思う。七三倉晩はMoーmentNo.1ホスト、キラだ。
グラスの中のビールを飲み干した。
社会人になる前は苦手だったビールの味。でもビールほど誤魔化しの効く飲み物はないのだということを社会で学び、ビールほどチープなアルコールはないのだということを夜の世界で学んだ。
( •᷄ •᷅ ).。oஇ
「野口、バンジー行こうぜ!」
「成世もいっしょやろうぜ☆」
「私より古今《ふるいま》さんを誘えばいいでしょう。」
あんな天使をバンジーに誘えるか!と啖呵を切られ、西條さんと野口さんに強制連行されてしまった私。かたや腕を引かれ、かたや小高い丘へと背中を押されていく。
丘に登れば、春めいた景色、菜の花畑が向こうの方に見えた。
そこには、マリア先輩とコキンちゃん、そしてなぜか一緒に七三倉晩がいる。各部課長への挨拶周りは済んだらしい。背の高い七三倉晩は、なにせここからでも目立ってしまう嫌味なやつ。
「西條ー、今日の夜コキンちゃん誘ってみる?」
「んあ?いいけど、コキンちゃん誘うなら自動的にマリア先輩がついてくるっしょ。」
「だわなあ。成世は?マリア先輩よりはまだ成世のがマシなんだけど、夜の飲み来る?」
マリア先輩たちがいる方角を見て、2人がそんな妥協案を持ちかけてきた。朝から騒いでまだ騒ぎ足りないのだろうか?
「いえ、さすがに今日はこの春闘を終わらせるだけでいっぱいいっぱいなので行きません。これ以上誘わないで下さい。」
「あ、そう。」
野口さんは、コキンちゃん1人だけ誘っても絶対に来てくれないから、他に来てくれそうな女性社員の名前を上げている。
遠目に見えるマリア先輩の甲高い笑い声が聞こえて、その隣でなぜかマリア先輩にボディタッチをしているコキンちゃん。今すぐ走ってそのボディタッチを遮りたい。
マリア先輩の、あのおおらかな性格で人脈が広いのは分かっている。仕事でもプライベートでも、マリア先輩は失態を犯しても絶対に嫌われない人だ。
羨ましいと思う。私は人間性というものを勉強して自分を造っていかないと好かれないのだから。一般的にみて、私は嫌われず好かれず、影の薄い人間なのだと思う。
オーラとかそういったスピリチュアル的なものはない。自分を造って、夜の世界でNo.1になることしかできない。
多くの人には、それで十分じゃないか。と諭されることだろう。人間、多くを求めてはいけない。でもやっっぱり造らず、そのままでも多くの人間に好かれるマリア先輩を羨ましいと思ってしまう。



