after7は笑えない


「大石恵?」

「そうそう!大石恵!hydeの元奥さんの!」

「だからあ。どう考えたって言いすぎだって!」
 

……へえ?そうなの?自分ではよく分からない。え?待って。つまり大石恵=ガイガンなの?


成世が大石恵に似ている事実よりも“hydeの元奥さん”というワードが妙にひっかかってしょうがないのは気にしないようにしよう。


「七三倉君って見る目ないねえ〜。成世がどう整形したって大石恵にはならんだろう〜」
 
「でもうちの店の奴らが超騒いでましたよ。隣のNo.1が大石恵に似てるって。」


その言葉に、平常通りの無表情で固まる私。きっと大石恵よりも、今の私はかさこ地蔵に似ている。


ねえ、この公然の場でなにを喋ってくれてる? 
     

「え?……なに?みせ??」

「なになになんの話ー??なんばーわん?隣の店の?」


西條さんが、海老の焼け具合をトングで探りながら聞いてきて。割と的確に言葉をなぞっているマリア先輩は、すでにコップのビールを飲み干している。


「あ。すんません、なんでもないでーすって峯田さん、海老の後に肉焼いたら肉が海鮮臭くなりません?」

「えーそうなのー?!ごめーん何も考えてなかった〜!」


肉をトレイからそのままグリルに広げたマリア先輩。仕事は無能、仕事以外では有能、だけど大ざっぱ。私と七三倉晩が2人してトングで肉を端に寄せ、先に海老をそれぞれの皿に取り分けた。


身体が勝手に世話を焼いてしまう。夜の職業病が慢性化してしまっている。難病だ。


野口さんに、「なるせー海老剝いて〜」と赤ちゃん返りの声で海老の乗ったお皿をつき返された。


「手が痒くなるから成世剝いてよー」という30歳。さすがにその上目遣いは無効です。(でもちょっと可愛い)


野口さんの“成世やってやって”の甘え癖は、新幹線でいくつもの地方を通過する頻度となだらかさ。野口さんが悪いのではない。世話を焼き過ぎてきた私が悪いのだ。


「はいはい。」と仕方なく受け取ろうとする。でも、向こうから伸びてきた手が、私と野口さんの間に割って入った。


「俺、剝きますよ。」

「なにを?」

「海老を。」

「いいよ七三倉くん、こういうのは成世にやらせるし」

「成世サンより絶対俺の方が剥くの早いですよ?」

「ほんと?なら七三倉くんにたのもっかな〜」


野口さんが「えへへ」となぜか照れながら七三倉晩に海老のお皿を渡せば、私はお役目御免となった。


なんでか、七三倉晩という名のキラ君の方が見れない。むず痒いってこういうのをいうのだろうか。


でもお皿を受け取ったキラ君の海老の早剥きは想像を逸した。ほんとうに、驚くほど早かった。