「2課に配属の七三倉君かあ〜!いや最高だね君ぃ!」
「うちの成世に噛みつくたあやるねえ七三倉くん!」
そういう西條さんと野口さんは、いつも私に噛みついてきますけど。
着席早々席を替えたい。立ちたい。立って走って近場のコメダで時を経たい。
私とマリア先輩が並んで座るなか、西條さん、野口さん、そして七三倉晩が向かいに座っている。せめてもの救いは、マリア先輩の真向かいに七三倉晩が座っているということ。
いや、そもそも私がこんなに萎縮する必要は本当にあるのだろうか。だってとてもじゃないけど信じられない。
おんなじ会社?同期?No.1ホストと??いつから??運命にしろ必然にしろ、…あ、やっぱ冬眠したい。
「それよか七三倉君って情報システム部のSEだったんだよね?なんで営業に転身したの?営業もSE並のブラックホールじゃん。」
西條さんが、プラスチック製のコップを手に取り言った。
“終わりのみえない地獄”という仕事が法律的に認められていること自体、世の中は理不尽だ。
私はジンジャエールの瓶を手に取り、西條さんの持つコップにサラリと注ぐ。
手持ちぶさたの野口さんも何気なくコップに触れたので、ジンジャエールを持つ手を野口さんの方へと向けた。
「成世〜、僕ジンジャーとコーラのカクテルがいんだけど」
「はい、7対3ですよね。」
知ってますとも。何度あなたに引きずられて飲みに連れて行かれたことか。その癖野口さん、下戸だからジュースばっかだし。(理不尽。)
野口さんに「任せるわ」とコップを渡された。
こんなホスト怪奇事件中でも、当たり前のように私が“野口カクテル”を作っていれば、斜め方向からわざとらしい咳払いが沸いた。
「ちょっと、気になる人間が営業にいたんで。」
「え?!なにそれ!営業に好きな人がいるってこと?!」
「いやなんてゆーか。勝手に戦線離脱されたんで。ただむかついて同じ土俵に立ってやっただけです。」
急に息が出来ない。気管にグリルの煙が入ったらしい。
「ゴほッケホゴホごほゲホッっ」
「成世ちゃん大丈夫!?老化による気管支の圧迫現象なんじゃない?!」
隣の32歳マリア先輩が、私にビールを注いでくれた。大きなお世話なのでどうか水にして下さい。
「ありがとうございます。……マリア先輩、車で来てましたよね?ビール飲むんですか?」
「飲むよ!飲むに決まってんじゃん!帰りは課長が運転してくれるからね!」
上司に運転させる気満々のマリア先輩が、豪快に片手で海老の゙束をつかむ。それを「えいっ」とグリルに放れば海老が大渋滞した。



